ワクチンを打つと不妊になる、流産するって本当? 専門家が解説
「ワクチンを接種すると不妊になる、流産してしまう」。インターネットで拡散されているこの言説は、全国の妊婦やその家族、今後妊娠の可能性がある女性たちに不安を抱かせている。 そこで、ワクチンと不妊・流産の因果関係について、新型コロナウイルスに関する正確な情報を届けるプロジェクト「こびナビ」の運営者であり、自身も妊娠中にワクチンを接種した経験のある、内田舞(うちだまい)医師にお話を伺った。(Yahoo!ニュース Voice)
ワクチンを打つと不妊になる?
「ワクチンを打つと不妊になる」という噂は、米国の製薬会社の元職員がブログで発信した内容が発端となっています。 『コロナウイルスの周りを囲むスパイクたんぱくは、胎盤のたんぱく質に似ている。だから、ワクチンを接種したことによって獲得した抗体を介し、私たちの免疫系が、誤って胎盤のたんぱく質までも攻撃してしまう』。こういった自説を掲載したのです。 しかし、科学的に検証すると、この不妊説は誤りであるといえます。コロナウイルスの「スパイクたんぱく」と「胎盤のたんぱく質」は、塩基配列のごく一部のみが似ているだけで、構造としては全く異なるということがわかっています。つまり、ワクチンが胎盤のたんぱく質に悪影響を及ぼしてしまうということはありません。 ワクチンを接種しても、不妊にはならないといえる根拠は他にもあります。 ラットでの動物実験においても、妊娠前にワクチンを接種したラットが、その後正常な妊娠・出産を経験し、生まれた子どもにも異常がなかったということが、すでに確認されています。 また、ファイザービオンテック社・モデルナ社のワクチン臨床治験においても、ワクチン接種後に妊娠した方は多数います。ワクチン接種後の女性の妊娠の確率は、ワクチンを接種していないプラセボ群と、全く変わりがありませんでした。
ワクチンを打つと流産してしまう?
アメリカでは、6月14日付で124,000人以上の妊婦さんがワクチンを接種されています。また、妊娠中にワクチンを接種された方、または受精や着床の時期にワクチンを接種された方については、アメリカの中で追跡調査が行われており、私自身も参加しています。 この追跡調査の3月までのデータが、非常に信頼性の高いピアレビュー(査読)をする科学雑誌「The New England Journal of Medicine (NEJM)」で発表されました。調査によると、「ワクチンを接種した妊婦の流産・死産率」と「パンデミック前の、一般的な妊婦の流産・死産率」は全く変わらないという結果が出ました。さらに、生まれてきた赤ちゃんに関しても、早産や低出生体重、先天性異常、新生児死亡などは、妊娠中のワクチン接種有無にかかわらず、同じ頻度で起きていました。