ワクチンを打つと不妊になる、流産するって本当? 専門家が解説
有害事象と副反応の違い
本当に残念なことですが、流産という悲しい出来事は、パンデミック以前から世界的に10~26%ほどの頻度で起こっているものです。ほとんどが、染色体異常などに原因があり、妊婦さんが何かをしたから/しなかったから、ということが原因ではないケースが多いです。 しかし、ワクチン接種後に流産が判明した際に「ワクチンを打ったことが原因なのではないか」と考えてしまう気持ちは、私自身とてもよく理解できます。 その時に考えていただきたいのは、「有害事象」と「副反応」の違いです。 ワクチン接種後に何か悪いことがあった場合、それらは全てワクチンの「有害事象」にカテゴライズされます。例えば、ワクチンの接種後にうっかり石につまずいて、転んで膝をすりむいてしまったとしましょう。それも有害事象です。有害事象には、ワクチンのせいで起きたこと、ワクチンとは全く関係なく起きたこと、どちらも含まれます。 有害事象とワクチンの因果関係を調べるために行われるのが、一般発生率との比較・検証です。「ワクチンを接種して、転んで膝をすりむいてしまった」という有害事象を検証する際には、転んで膝をすりむいた人が、ワクチン接種有無に関係なく、どのくらいの確率でいるのかを調べる必要があります。 ワクチンを接種していない人と比べて、ワクチンを接種した人の方が、より多く転んで膝をすりむいていたという結果が出たとします。その場合は、ワクチンのせいで「転んで膝をすりむいてしまった」という因果関係が示唆されます。 こうして因果関係が示唆された有害事象のことを、特別に「副反応」と定義します。 ですので、「ワクチンを接種した妊婦」と「接種していない妊婦」の流産率に差がない場合、流産はワクチンの副反応ではないということになります。
mRNAは胎盤に届かない
流産に関して、基礎医学的に考えましても、ワクチン接種が悪影響を及ぼすことはないと言えます。なぜかというと、mRNAワクチンの「mRNA」は非常に脆いものなので、私たちの肩に注射された後、すぐに分解されてしまうのです。mRNA自体が胎盤に届くことも、胎盤を通って赤ちゃんに届くこともないと考えられています。 さらに、動物実験においても、安全性は示唆されています。妊娠中のラットがワクチンを接種した後、健康な妊娠をへて、健康な子供を出産したということが確認されているのです。こちらも安心材料の一つとしていただけたらと思います。