サステナブルツーリズムの先駆者「パラオ」が取り入れる“環境税”の意義
サイパンの悲劇を繰り返さない
洋上の楽園として、自然豊かなリゾート島として、安売りはしない。この豊かな自然の意義や価値を理解し、だからこそ体験したいと思う人に訪れてほしい。 そうしたストイックな姿勢を見せるのも、パラオの矜持なのだと黒崎准教授は言う。 「国内の観光業界関係者の間で知られている言葉に『サイパンの悲劇』というものがあります。かつて日本から年間45万もの人が訪れていたサイパンですが、その背景には日系のリゾートホテルを多く建てるなど、インフラ整備も含めて多くの投資をしていたことがありました。 しかも直行便なら3~4時間で到着するロケーション。アクセスの良さから多くの旅行者が訪れはしたものの、航空代を含めたツアーで安売りをしすぎてしまいました。ダンピングによって利幅は低くなりサービスの質も低下。しだいに観光客の足は遠のき、ついには“忘れられた旅先”と言われるまでになってしまったのです。 その様子をパラオは見ていました。観光客をたくさん呼ぶために質を落としてしまうと良い結果とならない。安売りはせず、観光と環境をバランス良く取るイメージを持って戦略を練っていったのです」。 かの地を訪れたことのあるダイバーらの旅行者が口を揃えて滞在の充実ぶりを讃えるパラオ。その魅力を黒崎准教授は「太平洋の島々が有する雄大な自然、時間をかけ育まれてきた伝統文化を身近に体験できるデスティネーション」だとする。 身近だと言った最たる理由は、現在は未就航ながら直行便なら4時間半ほどで着けることに加え、何より時差がないため。現地入りしたなら時差ボケをすることなく、大自然の中で遊ぶことができるのだ。 そして今年のGWにはチャーター直行便によるツアーが4年ぶりに復活した。サステナブルツーリズムの先駆者であるパラオの大いなる自然を、より気軽に味わえる機会が生まれたのである。 鍵井靖章=写真 小山内 隆=編集・文
OCEANS編集部