ロシアの飛び地領「カリーニングラード」駐屯のGRU特殊部隊、欧州諸国への破壊工作に向け不気味な訓練
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ クレムリンはいかにNATOの集団防衛に挑んでくるか 【写真】訓練中のロシアの特殊部隊 [ロンドン発]「クレムリンはいかに北大西洋条約機構(NATO)の集団防衛に挑んでくるのか。陸・空・海・宇宙・サイバー空間で非正規戦がエスカレートする中、5条(集団防衛規定)を発動させない範囲でのロシアの作戦は思っているより早くNATOを試す可能性がある」 英国を拠点とする戦略的コミュニケーション会社アルバニー・アソシエイツの上級研究エグゼクティブ、ジョー・モーリー=デイビーズ氏は1月3日、シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所」(RUSI)への寄稿でこう警鐘を鳴らしている。 「クレムリンは自信を深めている。莫大な犠牲を払いながらもウクライナ東部の前線で主導権を取り戻している。同時に西側諸国を混乱させるための活動は放火、爆破、暗殺未遂など、激しさを増している」(モーリー=デイビーズ氏) 英情報局保安部(MI5)のケン・マッカラム長官は2024年10月、「ロシア軍がウクライナの戦場で多大な犠牲を払いながら侵略を継続する一方で、ウラジーミル・プーチン露大統領の配下は西側の決意を弱めようと他の場所を攻撃しようとしている」と指摘している。
■ 750人を超えるロシア外交官が欧州から追放された 22年のウクライナ全面侵攻以来、750人を超えるロシアの外交官が欧州から追放された。その大半はスパイだ。英国は西側同盟国と協力して、ロシアのスパイからの外交ビザ申請を拒否することで圧力をかけ続けている。外交特権という“盾”を剥ぎ取るためだ。 ロシアの在外大使館に属するスパイの数が減れば、ロシアの情報機関にとってサイバーの重要性が増す。さらに海外で破壊工作を展開するため民間情報機関員や犯罪者を含む英国や第三国のプロキシ(代理人)をロシアが利用することが昨年から目立つようになった。 ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)は英国や欧州の街角で騒乱を引き起こすという持続的な使命を担っている。GRUによる放火や破壊工作はますますエスカレートしている。MI5は24年、英国で活動するGRU工作員を一人残らず追放し、多くの拠点の外交特権を剥奪した。 プロキシへの依存度が増せばロシアの情報活動や破壊活動はアマチュア同然となり、MI5や英国の警察当局は対処しやすくなる。「欧州全土、世界各地のパートナーとの作戦連携を強めている。協調的なキャンペーンには強力かつ持続的な対応が必要だ」とマッカラム長官は強調する。