【解説】大企業過去最高益、日本に還流せず 日本に投資を取り戻す、政府、財界の案は?
■企業は動き出すのか
日本国内への投資を拡大するには、どうしたらいいのか。今月、長野県軽井沢のホテルで行われた経済同友会メンバーらのカンファレンスでも討議された。
日本IBMの山口明夫社長は、日本企業自らが国内投資すべきと訴えた。「日本は30年間、安いものを海外でつくって輸入するというメリットを享受してきた結果、産業の空洞化が起きた。人手不足で生産に支障が出るなら、自動化を進めて、生産、輸出するなど、日本企業が自ら国内に投資する姿勢を見せない限りは、海外からも日本が魅力的だと受け入れられないのではないか」。そして、日本IBMは海外でソフトウエアを製造していた3000人を国内にシフトしたと明かし、「日本でつくるという流れに変えていきたい。経済界のみんなで、もう一度、国内投資を含めて見直すというのが一つの突破口」と呼びかけた。
インテルの鈴木国正会長は日本の強みを、さらに強くする投資を優先する重要性を訴えた。具体的には世界でも卓越している「装置産業」をより強化して、中国や韓国に負けない強さを維持するのが重要だと強調した。その実現に向け、インテルはリーダーシップを取り、半導体関連企業15社ほどと後工程標準化に向けて取り組んでいるという。
投資ファンド「ユニゾン・キャピタル」川﨑達生会長は、日本に投資を呼び込むためには「円安で割安だから買われる」のではなく、資産の魅力を高める必要があると話した。日本は規模が小さい会社が多すぎて、生産性が上がらない傾向があるので、M&Aなどで規模を大きくして、IT投資などに利益を回し、効率化を進めた方がいいという。「M&Aで日本の会社数が減ったとしても、それは雇用が減ることとは全く別のことで、むしろ利益を出せるようになれば、報酬を上げる、業容拡大で採用を増やす、ということにつながっていく」としている。
一方、パナソニック コネクトの樋口泰行CEOは、企業への投資が日本の競争力に結びつく形の投資にならなければいけないとクギを刺した。企業が買収された際に、技術やノウハウがきっちりと引き継がれていく必要があるとしている。さらに、日本の経営に苦言を呈した。「時代遅れで、圧倒的にアップデートしないと何も始まらない」。海外の経営者に比べて動きが遅く、経営判断や行動に時間がかかると指摘。すべての考え方がサビついていて、アップデートしないと、(技術やノウハウが)みんな海外に流出してしまうのではないかと危機感を示した。