【解説】大企業過去最高益、日本に還流せず 日本に投資を取り戻す、政府、財界の案は?
株価がまた上昇している。日本企業への成長期待もあるという。今月発表されている企業決算でも過去最高益が相次いでいる。しかし、株高だからといって、日本経済は大丈夫だという楽観的な発言は、政府からも経済界からも出てこない。 【背景】上場企業決算 最高益相次ぐ…円安など影響 経済産業省は今月発表した通商白書で、円安なのに輸出が伸びていないと指摘した。財務省・神田財務官は私的懇談会の報告書をまとめ、日本企業が海外で稼いだカネが半分しか日本に還流していないことの問題点を投げかけた。 財界のカンファレンスでは、経営者たちが「日本が投資を呼び込めない理由」を赤裸々に語り、変革を呼びかけた。政府や経済界はなぜ、じれているのか? 突破口は何か? (日本テレビ解説委員・安藤佐和子)
■通商白書…円安でも輸出が伸びない
今月、通商白書が公表された。そこで特に注目されたのは“円安なのに輸出が増えない”こと。 かつて1ドル=70円台、80円台だった時代、経済界はこぞって円高による苦境を訴えていた。 ・2012年1月 経団連・米倉弘昌会長(当時)「円高が輸出企業の経営を圧迫している」 ・2012年12月 トヨタ自動車・豊田章男社長(当時)「超円高をはじめとする六重苦は解消されず(略)このままでは、民間企業による必死の努力の限界を超え、日本のものづくりを守り続けることは難しくなってしまうのではないか」 それから12年たった今、円相場は全く逆の状況にある。1ドル=160円前後での推移。円の価値は当時の半分ほどとなった。確かに円高の時に苦境を訴えていたグローバル企業の多くは、過去最高の利益をあげている。 しかし、通商白書は次のように指摘した。「円安は輸出の好機であるにもかかわらず、実質で見た輸出(の数量)は伸び悩んでいる」。なぜか。企業は円高の時代に指をくわえて見ていたわけではなく、生産の多くを海外に移してしまったからだ。その結果、いわゆる“産業の空洞化”が引き起こされ、当然ながら輸出量の減少につながった。したがって、円安になったからといって、輸出量がそう増えるわけでもない。 白書はさらに、もう一つの背景を指摘した。企業が輸出によるメリットを数量の多さではなく、為替の差益に求めるようになっているというのだ。かつてのように、円安を武器にして価格優位で販売を伸ばす手法ではなくなっているという。企業からすれば、利益が増えるなら、それでいいかもしれない。だが、大企業が販売量を増やさないということは、そこに納めている中小下請け企業の売り上げも増えないだろう。だからといって「グローバル企業は、けしからん」と責めたてられる話でもない。 では、どうすべきか。まず白書は「円安は中小企業などが輸出を新たに始める好機」として、万全な輸出支援を継続するとした。また、国内生産拡大を後押しする施策も強化されている。例えば、半導体や先端電子部品、産業用ロボットなどの生産設備投資などの費用を助成する。では、生産の国内回帰は増え、日本経済は好転するのか? まさに、その処方箋づくりに向けた議論が財務省の一角で行われていた。