後継者不足が深刻な一方、新展開を仕掛ける女性社長も。大阪・箕面名物「もみじの天ぷら」、食べ比べてみた
「桃太郎」の創業は1901年。「箕面有馬電気軌道」(現在の阪急電鉄)が開業し、「箕面公園」駅として運用されたより前の話だ。 「うちが、もみじの天ぷらの元祖。開業当時は、この店だけポツンとあって、もみじの天ぷらを提供していた、みたいな話を聞いています。その後、電車が通って観光客が増え、店も徐々に増えたそうです」。今では平日でもかなりの人出があり、滝道には多くの土産物店などが集まる箕面公園にもそんな時代があったようだ。 店ごとに、揚げ方や粉の配合など含めて「企業秘密」の秘伝のレシピがあり、「桃太郎」の場合、原材料は、小麦粉、砂糖、ごま、もみじ葉、となっている。さらに手で鍋に入れたり、箸で入れたり、揚げ方ひとつとっても各店で異なり、油の切り方で味も微妙に違ってくるんだとか。
◆ここにも店主の高齢化、後継者不足の影響が
続けて奥野さんは箕面滝道沿いの今後を憂いていると話す。「もみじの天ぷらを提供する店も、高齢化が進んでいて毎年1店舗ずつくらい減っている。以前は何十という店が軒を連ねたが、今はシャッターを下ろしたままになった店も。そんなにもうからないのにハードで、なかなか後継者がいない。うちの店もそう。箕面市にも空き店舗の活用を相談に行ったりしてますよ。店と住居が一緒になったところが多いので貸すにも難しい部分もあるけど、新しいやる気のある人に出店してい、活気が出たらいいんだけど・・・」。箕面のような、連日多くの人で賑わう観光地でも後継者不足は深刻なのだ。
◆独自路線を開拓!女性社長の「伝統銘菓を守りたい」想いが新商品開発につながった
一方、箕面駅のほど近く「久國紅仙堂 Cobeni」には、伝統的な銘菓のイメージを覆す「もみじの天ぷら」の商品が揃う。1940年創業の「久國紅仙堂」が、2020年から本店のすぐ近くで店内飲食も可能なカフェコーナーを設置し、若い女性たちも来店しやすい雰囲気の店舗を構えた。現在はスタッフ約20名の大所帯を抱え、もみじの天ぷらはじめ、さまざまなオリジナル商品を製造販売している。 こちらでは、ベーシックな伝統銘菓のもみじの天ぷらはもちろん、お土産や贈答用にも好評な「個包装」のもみじの天ぷらや、きなこ味や、黒糖、さらには塩、七味などさまざまなフレーバーの商品開発を行い、大人気に。地元の常連客は、帰省土産、年末のご挨拶などで買い求め、遠方からの観光客もこの店をめがけてくる人もいるそうだ。 代表の久國さんのこだわりが詰まったもみじの天ぷらは、紅葉シーズンには午前中に完売してしまうことも多く、取材中にも「もみじの天ぷらありますか?」と来店する人が後を絶たなかった。