〈食べログ3.5以下のうまい店〉名物は「羽釜ご飯」。麻布台で17年間愛され続ける、看板のない日本料理店の秘訣
口へと運ぶと、皮目は揚げたかのような歯ざわりで、内側の身は煮魚のようなとろりとした食感。そのコントラストが実に秀逸だ。添えてある鬼おろしと自家製の醤油でいただく。説明のいらない料理を信条に生み出される数々は、無駄のないシンプルな姿だが、食せば思わず息を呑むものばかり。
外川さん「のどぐろの炭火焼きは入荷次第なので、訪れた日にあったらそれだけで心が躍ります。登場すると、常連のお客様から「そうそう、これが食べたくて」という声が。」
締めのご飯は、カウンター内にある羽釜で炊き上げる。火の当たりが丸く、ほどよい食感を残せるのが特徴だ。土鍋よりも短時間で仕上げられるので、ゲストそれぞれに最適なタイミングで提供することができる。厳選するお米は、福井県の標高560~570mの棚田で湧き水を引き込んで自然栽培米している「あきさかり」。下枝氏が指定する通常より低い精米歩合にすることで、でんぷんが少ない軽やかな炊き上がりに。
お茶碗に盛られた「あきさかり」は、どこか懐かしいお日さまの匂いを感じ、噛めば噛むほどじわじわと味わいが深まる。それは、最近流行りの、一口目で甘みを強く感じるご飯とは一味違う、驚くほどあっさりした味わい。しかし、上質な旨みがあり、深く印象に残る。
炊き立てのご飯と共に提供されるのは、味噌汁、自家製の昆布塩、漬物、蓮根の金平、明太子、鰹節、卵かけご飯用の卵と自家製醤油、本日のおかず。「旅館の朝ごはんが好き」という下枝氏の言葉を聞くと納得するラインアップだ。一膳が少なめの量で、2膳3膳、いや4膳5膳とお代わりしてしまうだろう。
料理は、8~9品前後で構成されるおまかせコースのみで25,300円~。お肉なしのおまかせコースは19,800円~。お好みやお腹の具合によって追加に応じてくれるのもうれしいところ。
外川さん「プリッとした食感で上品なうまみを感じる羽釜のご飯は、延々と食べ続けてしまうような優しい味わい。いつも気づけば3膳以上はお代わりしてしまいます。」