宇宙船「スペースシャトル」の意外な真実…たった5機で作るのをやめてしまった「ざんねんな結末の理由」
世の中には残念な乗り物がある。すぐれた性能や将来性を備えていたのに、時代のニーズや期待などからズレてしまい、十分な活躍ができなかった乗り物などだ。 【写真でみる】ざんねんすぎた乗り物…幻の飛行機「コンコルド」 書籍『ざんねんなのりもの事典』には、失敗作などではなく、成功できなかったちょっと残念な乗り物がたくさん掲載されている。なかには登場(発表)当時には期待いっぱいだったのに、手のひら返しをされてしまったかわいそうな乗り物もある。 「スペースシャトル」も、登場当時は子どもたちや乗り物好きをわくわくさせ、宇宙を一気に身近な存在にしてくれたが、残念な道をたどった乗り物の一つだ。
使い捨てのほうが実は安かった
百億円規模と言われる、ロケット打ち上げの費用を少しでも抑えるべくアメリカで開発されたのが、スペースシャトルです。宇宙船の本体部分を航空機に似た形状とし、航空機と同様の飛行によって宇宙空間から基地に帰還させることで、船体の使い回しが可能になり、運用コストを格段に下げられるという触れ込みでした。 計画は1972年に発表され、1981年に初飛行を実施。従来の実用一点張りの宇宙船とは全く異なり、造形にデザイン性を感じるスペースシャトルのスタイルも手伝い、未来の宇宙開発を印象づける十分な本気度がうかがえました。 ところが、スペースシャトルは誰も予想しなかった大きな問題を隠し持っていました。当初は1回20~30億円ほどに抑えられると見込まれた運用コストが、シャトルを再使用するための点検と保守費用を含めると、莫大な額に膨れ上がったのです。 その額は1回あたり500億円とも1000億円とも言われ、従来の宇宙船のほうがはるかに安いほどでした。 結局、スペースシャトルは、2011年までに計5機が135回の飛行を実施し、退役。一応の目的は果たされたと言えます。しかし、退役後に登場した宇宙船は、すっかり昔ながらの姿形に戻っています。 …つづく<日本に存在する「ざんねんな乗り物」…たった1度きりの試運転で消えた、ナゾ多き「特急列車」の名前>でも、時の不運が重なり社会から消えた乗り物を紹介します。
講談社ビーシー