発展途上にロマン 大阪桐蔭・平嶋、目指すは絶対的エース センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(22日、甲子園) ◇○大阪桐蔭7―1北海(北海道)● 149キロの直球や140キロ近い高速の落ちる変化球を披露した一方で、明らかに狙っていないであろう逆球もちらほら。完成度が高いとは言いがたいが、だからこそ伸びしろとロマンを感じる。これが平嶋桂知、今春の大阪桐蔭の背番号「1」だ。 【写真】力投する平嶋桂知投手 唯一のピンチは味方が4点を先取した直後の四回。「簡単にストライクを取りにいった」と言うように、先頭から3連打を浴びて無死満塁とされた。だが、そこからが本番だ。「打者の反応を見ながら、コースに投げよう」。後続を断つイメージはできていた。 言葉通り、この後の制球は安定していた。5番打者を137キロの落ちる球で空振り三振に切って取ると、6番打者は148キロで右飛。味方のエラーで1点を失ったものの、次打者を左飛で乗り切った。以降は1人の走者も出さずに7回1失点(自責0)でマウンドを降りた。北海の平川敦監督に「春先のこの時期にあのボール。初見じゃ厳しいんじゃないかな」と嘆かせた。 186センチの恵まれた体格から最速154キロを投げる世代屈指の右腕だが、昨秋までは今以上に制球力に難があった。特に変化球でカウントが稼げず、気づけば3ボールもよくあった。テンポの悪い「情けない投球で迷惑をかけることが多かった」と振り返る。 試合後のバス移動では、必ず正捕手の増田湧太の隣を陣取り反省会をするなど真面目な性格。冬場は「ストライクゾーンで勝負」をテーマに、全球種の制球力向上に時間を割いた。増田は「クイックやマウンドさばき、気持ちの面で、経験するごとに良くなっていった」と評する。 自身も手応えを胸に臨んだ初戦。好投で顔をほころばせたのは平嶋だけではない。西谷浩一監督はこの1勝で春夏の甲子園大会の監督通算勝利数を68に伸ばし、智弁和歌山などを率いた高嶋仁さんの最多勝利記録に並んだ。さらに今大会、開幕から5連敗中だった近畿勢に初の白星をつけた。 これぞ歴代最多の東邦(愛知)に並ぶセンバツ5回目の優勝を目指す名門の背番号「1」の活躍と言える。だが、本人が目指すのは「大阪桐蔭の絶対的エース」で、「もっと打者を圧倒するような投球をしないといけない」。【森野俊】