「トイレ行ってきていいですか」も言えなかった――活動再開から1年、渡部建50歳の生きる道
以前は、『トイレ行ってきていいですか』も言えなかった
「反省をしつつ、行動的になるっていうイメージですかね。もちろん迷惑をかけたり、不愉快な思いをいまだにさせてしまっている方、たくさんいるので、そういう方にはもう、一生かけてでも謝りたい。鈍感力とか、図太さがないと、とても世には出ていけないですよ。デジタルタトゥといいますけど、それでいうと、もう僕、顔面に和彫りでコイを入れてるようなものなので。以前は、『トイレ行ってきていいですか』も言えなかったんですよ、みんな『エッ』ってなるんで。でもそういうことを気にしすぎていたら、もうダメだと思ったんです。昔の繊細な渡部だと、もう持たない。ある程度意識して、ポジティブにというのが、テーマではありますね」 騒動直後、ネットには罵詈雑言が溢れたが、直接面と向かってひどい言葉をぶつけてくる人はほとんどいなかった、と話す。 「町中でも『頑張ってくださいね』とか、『待ってますね』って言ってくれる人はいますけど、わざわざ肩をトントンして、『お前気持ち悪いな』って言う人はいないんです。飲食店でも、家族で行った旅行先でも受け入れてもらえましたし、リアルな世界では、たくさんの人たちに癒してもらいました。過去のことを考えても、戻ることはできません。将来テレビに出られるのか、どうなるのかも、自分の力ではどうすることもできないじゃないですか。こんな僕でも、リアルに必要としていただけるところで頑張ろう、シンプルにそう思えるんです」 感謝の思いと、勤労の充足感。絶頂期には見えなかったものが今、渡部を前へと突き動かしている。 ちなみに最近ハマっている美味しいものは、と最後に聞くと、「自然派ワイン」とのことで、おすすめの日本ワインをたくさん教えてくれた。グルメに傾ける熱量は以前のまま。2020年以来更新されないグルメブログの復活は、いつだろうか。 ___ 渡部建(わたべ・けん) 1972年、東京・八王子生まれ。芸人、コミュニケーション講師。1993年、神奈川大学在学中に高校の同級生だった児嶋一哉とお笑いコンビ「アンジャッシュ」を結成。2003年、NHK「爆笑オンエアバトル」5代目チャンピオンに日本テレビ「エンタの神様」などで活躍。その後は数々の人気番組の司会を務め、現在はコミュニケーションをテーマにした企業向けの講演活動を積極的に行う。近著に『超一流の会話力』(きずな出版)。