「トイレ行ってきていいですか」も言えなかった――活動再開から1年、渡部建50歳の生きる道
もう全部妻のおかげ
最近は講演の準備や会議などを中心に、忙しい毎日を送っている。芸能活動は発生ベースで調整し、土日はしっかりと休み家族で過ごす。キャンプの楽しさを知ったのも、自粛してからのことだ。 「それまで、休みも一切なく、仕事ばかりしていました。自粛をしてからは1年以上、妻に働いてもらったので、ワンオペ育児を経験することになって。慣れないことの連続でしたけど、息子と毎日二人きりでいられた時間は、僕にとってはありがたいものになりました。以前のペースで働いていたら、あっという間に大きくなって、何も見られなかったかもしれない。とんでもない事件で家族にはつらい思いをさせたんですけど、今の生活は、その反省の上に成り立っています」 もっとも、家庭が壊れてしまってもおかしくなかっただろう。なぜ家庭円満を取り戻すことができたのか。 「それはもう全部妻のおかげ。僕が偉そうに言えることじゃないですよ(笑)。でも、ちょっと話は違うかもしれないですけど、僕がこうなってから、『実はウチも…』って、過去の話をみんながたくさんしてくれるようになった。円満に見えていた夫婦も、いろんなことを乗り越えてとか、驚くような過去があったりする。皆さんが僕を励まそうと、自分のハードな不幸話をしてくれたんですね」
結婚式で大ウケ、「これか」
最近出た結婚式では、スピーチで大ウケしたという。 「こんな僕が結婚式でどんなトークをするべきかって悩んだんですけど。出て行っただけでもうクスクスきて、『結婚という永遠の愛を誓う式のスピーチとして、もっともふさわしい男、渡部です』でドッカーン(笑)。『結婚生活で一番大事なことがあります。絶対に嘘をつかないこと。奥さんを傷つけないこと。約束は守ること』でドッカンドッカン。『夫婦生活に大事なものは』とか言ったときに、『おまえが言うな』の空気になりました。これか、と思いましたね。僕がお役に立てる場所は意外とこんなところにもあったかと。必要としていただけるのであれば、結婚式の司会も、どんどんやっていきたいですね」 妻、佐々木希の第二子妊娠のニュースは、驚きを持って迎えられた。 おめでとうございます、と言うと、渡部は照れ臭そうに微笑んだ。 「もう頑張るしかない。本当にありがたいですし、なおいっそう頑張らないとな、っていう感じです」 この数年間で学んだことは、「感謝の気持ち」だという。 「家族に、まわりに、助けてくれた人、心配してくれた人への、感謝の気持ち。ここが足りなかったと思う。迷惑をかけた相手には、とにかく一生謝ろう。手を差し伸べてくれた人のために、尽くそう。そういう、シンプルな目標ができました」