「トイレ行ってきていいですか」も言えなかった――活動再開から1年、渡部建50歳の生きる道
活動再開から1年。かつての「繊細な渡部」とは違う、と話す渡部建(50)。1年7か月の自粛期間を経て顧みた自身の慢心、そして染みた妻の支え。講演活動、書籍の執筆、結婚式の司会……。自分にできることは何か、模索の末にたどり着いた「答え」とは。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ここで甘えちゃったら、僕、完全にどうしようもない人間じゃないですか
アンジャッシュの渡部建は現在、講演活動に軸足を置いている。テーマは主に、「コミュニケーション」。 芸能活動自粛前は、トップ芸能人たちと盛んに交流し、一流の話術を目の前で体感してきた。そこから得たコミュニケーションのコツは、渡部の財産だ。MCとして、大御所たちを相手にゴールテンタイムのバラエティ番組を取り仕切っていた経験も大きい。 「家族とはしっかりと話し合い、本当に険しい道のりだけど、みんなで人生を頑張っていこうという結論になりました。言葉では語りつくせないくらい、妻には感謝しています。だから、もうこれは、どんな厳しいご指摘を受けようとも、世に出て、稼がないといけないと思いました。家族のために、働きたい。何としてでも」
自粛に入った直後は、苦しい時間が続いた。 「一年近く、ほぼ収入はゼロでしたね。20代の頃はまだ食えなくて、借金を完済したのが32歳。お金がない生活は知っています。でも、家族がいる状態でのこれは、かなり精神的にきました。ネットで『奥さんが稼いでいるからいいじゃん』っていう意見もいただきましたけど、ここで甘えちゃったら、僕、完全にどうしようもない人間じゃないですか。あんな事件を起こして、妻の収入で生きていくって。一生、家族は養っていきたい。ここだけは、夫として父として、譲れない一線だと思いました」
以前報道されたように、豊洲の仲卸で体を動かして働いたこともある。 「収入が出てきて、ああ、何か、まだ自分は必要とされているんだと思うと、やりがいを感じて、ポジティブになりました。起こしてしまったことは消せないし、いろいろ言われるのは仕方がないです。でも、タラレバで考えたり、もう自分はダメかもしれないと後ろ向きに落ち込んでいる時間は、もったいないと思うようにもなりました。ともかく、世に出て、何を言われようとも、仕事をしなければ。反省もしながら、これからは全部好転させていこうと」 かつてのように芸能界で活躍したいと思うか。そう聞くと、複雑な表情を見せた。 「戻るぞという気持ちは絶対捨てないですけど、まあ当時のような仕事の仕方は……。今振り返ってみると、みなさんに満足いただけるものではなかったと思います。最後のほうは、何をやっても褒められないし、怒られないような状況だった。視聴率が悪くても、番組が打ち切りになっても何も言われない。仕事しているようで、していないような状態。総合MCでありつつ、番組の中心にはいなかった。もしもいつかあの場に戻れるならば、芯を持って、きちんとお役に立てれば、と思います」