人気絶頂でテレビから消えた「松本ハウス」――心の病を経て支え合う芸人コンビの現在地 #病とともに #ザ・ノンフィクション #ydocs
「汚れなき壊れ屋」 25年ほど前に人気だったテレビ番組『ボキャブラ天国』(フジテレビ)で「松本ハウス」というコンビを紹介する際のキャッチフレーズだが、覚えている人はどれだけいるだろうか? 【画像】現在の松本ハウスの2人の様子 同番組では、ブレイク前の爆笑問題、ネプチューン、海砂利水魚(現・くりぃむしちゅー)たち若手芸人が、言葉遊びのネタでしのぎを削っていた。 その中でも天才肌と呼ばれ、ひときわ異彩を放っていたのが「松本ハウス」だった。 奇抜な見た目で異彩を放つ、ハウス加賀谷の特異なキャラクターと、その横で巧みに加賀谷を操る冷静な松本キックとのコンビで一躍人気者になったが、その絶頂期に2人は忽然とテレビから姿を消した。
消えた「松本ハウス」
あれから25年、「松本ハウス」はどうしているのか? 今でもお笑いを続けていることは聞いていたが、あのギリギリの芸風を続けているのか?お笑いで食べていけているのか?そして、どんな人生を送っているのか? そんな疑問を解決するため、2人に会いに行くことにした。 松本ハウスは、ネタ作り担当でツッコミの松本キックと、丸刈り頭でピンクのパンツがトレードマークのハウス加賀谷のコンビ。 まずは、コンビの司令塔でもある松本キック(現在55歳)に会うと、あの尖りまくったネタを作っていたとは思えない程、穏やかできちんとした人となりに驚かされた。 聞けば、今は複数のアルバイトを掛け持ちしながらも、月1回の定期ライブに出演し、「松本ハウス」を続けているという。 結婚もして2人の父親であるキック。いつでも舞台に立てるように就職はせず、シフトが自由に組める時給1800円のコールセンター業務を筆頭に、昼も夜もなく働き、妻のアルバイト収入と合わせて、どうにか家族が暮らせるギリギリの収入を確保しているという。 「家族を守るためには何でもする」という良きパパとしての強い意思がうかがえたが、「お笑いを辞める」選択肢がないことも感じ取れた。 そもそも、人気絶頂期にテレビから消えた原因は、相方であるハウス加賀谷の「統合失調症」によるものだった。 キックも加賀谷の病気のことは当初知らなかったが、ある日、加賀谷が大量の薬を持ち歩いていたことから、その事実を知った。 厳格な家庭に育ったハウス加賀谷は、10代の頃から幻覚や幻聴に悩まされるようになり、高校を中退し、グループホームで2年間を過ごした後、幼い頃からの夢だったお笑い芸人を目指し、松本キックも所属していた芸能事務所に入った。 松本ハウスとして『ボキャブラ天国』で人気が出ると、休みがない状態が続いたこともあり、精神のバランスを崩してしまう。 無気力で起き上がれなかったり、ただ悲しくて大声で泣き叫んでしまったり、撮影現場に迷惑を掛けることが増えた。そのことでさらに自分を責める悪循環に陥り、再び統合失調症が悪化。スナイパーに命を狙われる幻覚も見るようになり、家族の強い説得で入院する。 こうして、松本ハウスはテレビから姿を消した。