「2年間進まなかったリニア問題」がわずか1カ月で解決…やはり川勝前知事の難癖は「オカルト主張」だった
川勝平太前知事が妨害し続けてきた静岡工区のリニア工事について、一条の光が差し込んだ。ジャーナリストの小林一哉さんは「約2年間泥沼にはまっていた『山梨県境のボーリング調査』を鈴木康友新知事があっさりと承認した。『川勝色』は一掃されつつある」という――。 【写真】川勝前知事の言い掛かりで始まった山梨県の工事ストップ問題 ■「調査ボーリング問題」があっさり解決 新たな静岡県政の最高責任者に就いた鈴木康友知事が、早速リニア問題の解決に向けて大きく舵を切った。 川勝平太前知事が約2年にわたって粘着していた「山梨県内の調査ボーリング」の言いがかりを退けたからだ。 川勝氏は2022年以降、「水一滴も県外流出は許可できない」として、「静岡県の水を一滴でも引っ張る山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を主張し続けた。 ところが、鈴木知事は「山梨県内の調査ボーリング」だけでなく、調査ボーリング以上に大量の湧水流出が懸念される先進坑、本坑掘削工事でも、「『静岡県の水』という所有権を主張せず、『静岡県の水』の返還を求めないこと」にあっさりと合意したのだ。 リニア工事では、ボーリング調査を経て、「先進坑」と呼ばれる一回り小さなトンネルを掘り、その後リニアが通る「本坑」を通す。 後述するが、元をたどれば「調査ボーリングをやめろ」の主張の発端は「先進坑掘削をどこで止めるか」だった。 問題の発端となった先進坑の掘削工事にまで踏み込んだ合意で、これまでの無理難題を持ち出した“川勝色”は一掃され、水資源保全の問題は解決に向けて大きく前進した。
■「ボーリング問題」は2022年10月に始まった 発端は静岡県が2022年10月13日、リニア工事に関する新たな協議を要請する文書をJR東海に送りつけたことだった。 静岡県の当時の主張はおおよそ次の通りだ。 山梨県内のトンネル掘削で、距離的に離れていても、高圧の力が掛かり静岡県内にある地下水を引っ張る懸念があるから、静岡県内の湧水への影響を回避しなければならない――ひいては、「静岡県境へ向けた山梨県内の工事をどの場所で止めるのか」を決定する必要がある。 この文書を受け取ったJR東海は静岡県の要請に困惑してしまう。 理論上、トンネル掘削することで高圧の力が掛かり、トンネルに向けて地下水を引っ張ることはありうる。JR東海も静岡県の要請を頭から否定できなかった。 ただ断層帯がない限り、湧水量は極めて微量であり、さらに締め固まった地質では引っ張り現象が起こらない可能性が高い。 しかし、県境手前約300メートルを越えれば、山梨県内の断層帯にぶつかり、大量の湧水の可能性がある。 実際には、調査ボーリングをやってみなければ、湧水があるのかどうかもわからないのだ。 ■そもそも山梨県の工事に口を出す権限はない 一方で、このボーリング調査は山梨県内の工事であり、静岡県の行政権限は及ばない。 静岡県は懸念を解消するようJR東海に「要請」しているに過ぎないが、実際は、「山梨県内の工事を止めろ」と求めていることに等しい。 ただその要請自体がふつうに考えればおかしいのだ。 というのも、地中深くの地下水は絶えず動き、地下水脈がどのように流れているのかわからない。 県境付近の絶えず動いている地下水に静岡県のものも山梨県もない。それなのに、「静岡県の地下水圏」があるとして、県境付近の地下水の所有権を主張することはあまりにもおかしい。 山梨県の長崎幸太郎知事は、静岡県のJR東海への要請書に強く反発した。 長崎知事は「山梨県の話をするのに、知事にひと言もないのは遺憾だ」と不満の声を上げた。