相手の「心の扉を開ける人」に共通している「チカラ」とは?まひろの作品にも反映されていた【NHK大河『光る君へ』#35】
なぜ、まひろは人の心の扉を開けるのか?
まひろが一条天皇の心だけでなく、貴族たちの心を物語でとらえられたのは、人生の苦みを知り、さまざまな人たちと関わってきたからだと思います。まひろは中下級貴族の生まれですが、彼女は社会的な地位にとらわれず、偏見のない目でさまざまな人間を見てきました。道長のような実権者の息子の心の内や苦労を知り、直秀(毎熊克哉)をはじめとする民の心にもふれてきました。物語作家が多くの人から共感され、求められる作品を書くには、人間のさまざまな側面を知ることが大切だと思います。 また、作中の登場人物への共感度や生きることで抱える悩みの内容は社会的な地位によって変わることはさほどないのかもしれません。我が子を心配するのも、人を愛することで喜びや苦しみを感じるのも、大切な人と離れ離れになった辛さを感じるのも、誰かの陰謀により苛立ちを抱くのも誰もが同じでしょう。 まひろは人間の心の複雑さや人間の多面性を知っているからこそ、あらゆる立場の人に適切な助言を与えられるのだと思います。本放送では、まひろは一条天皇に道長の娘を思う親心を伝え、新王様を亡くした悲しみに暮れるあかね(泉里香)に寄り添って執筆を勧めていました。 どのような立場にある人にも寄り添い、思いに共感し、適切な助言を与えられるまひろの才能は物語にもあらわれていると思います。 ▶つづきの【後編】では、平安時代「都の治安」についてお伝えします。紫式部も恐怖心を抱く体験をしていた。平安時代、内裏の近くには「盗賊」や「鬼」の存在も!?
アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗