年金は思っているよりもらえる? 2、30代が知っておきたい数字の見方 #くらしと経済
受給開始年齢の繰り下げで1.84倍にも
公的年金の給付額を増やすには、何歳まで働き、何歳から年金をもらうかのプランを見つめ直すのもひとつの手だ。 年金は現在、60歳から繰り上げ受給できることになっているが、そうでなければ65歳から受給するのが一般的。 玉木さんは、「今の若い世代は自分の親を見て、定年延長や再雇用を肯定的に捉える人も増えているのでは」と語ったうえで、70代前半まで働いて75歳から受給するのも経済的に豊かな老後を過ごすためのひとつの選択肢だという。 「年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げると、65歳から受給するのと比べて月の受給額が1.84倍になります。財政検証の過去30年投影ケースで、30歳の男女で最も分布の割合が高かったのは、男性が15万~20万円、女性が10万~15万円の値でした。それぞれの中央値を取って男性は17.5万円、女性は12.5万円とし、その合計に1.84倍をかけると30万円×1.84=55.2万円となる。何も特別なことをしなくても世帯でこれだけもらえる可能性が高いんです」
また年金には2004年から、持続可能な支給のためにそのときの社会情勢に合わせて、給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されており、少子高齢化が進む中、現役世代の負担が重くなりすぎないよう年金支給額が抑制されてきた。 この調整は成長型経済移行・継続ケースなら2037年、過去30年投影ケースなら2057年には年金財政の安定が見込まれるため終了する見通しで、以降は抑制されることなく年金額は賃金や物価にフルで連動していくことになる。 「マクロ経済スライドの調整終了も考慮すれば、年金は75歳から受給するほうが65歳で受給するより賢い、という側面があると考えます。老後の生活資金は年金以外に2000万円の準備が必要といったニュースもよく聞かれますが、不安が大きい人は、繰り下げ受給で不安を軽減するという選択肢もあるんです」 繰り下げ受給の場合、早くに亡くなったら損をすることも考慮する必要はあるが、70歳からの受給でも1.42倍になるなど様々な選択肢がありそうだ。