神経を抜いたのに歯が痛いのはなぜ? すぐ受診すべき? 原因や対処法を歯科医が解説
神経を抜いた歯が痛んだらすぐに受診すべき? 歯医者さんではどんな治療をする?
編集部: 神経を抜いた歯に痛みが出た場合、すぐに歯科を受診すべきでしょうか? 髙井先生: こちらも先の「歯の神経の治療中」と「治療後しばらく経過してから」の2つのパターンに分けてお話しします。 まず、治療中の痛みに関しては治療にともなう正常な反応であることが多いため、軽度な痛みであれば基本的にそのまま経過を見ていただいて問題ないと思います。 一方で、治療後かなり期間が経過している、あるいは歯が急に痛くなった場合は何かしらの問題が起こっているサインの可能性が高いので、できるだけ早めの受診をおすすめします。 編集部: 神経を抜いた歯が痛んだ場合、歯科医院ではどのような対処・治療を行いますか? 髙井先生: 歯の神経の治療中に強い痛みがあるケースについては、まず噛み合わせをチェックします。治療中の歯が強く噛んでいると痛みがでやすいので、その場合は噛み合わせを調整し、痛み止めなどを処方して様子を見ます。 治療後しばらく経過して痛みが生じているケースについては詳しい診査・検査などで原因を特定し、それぞれの原因に応じた治療を行います。 編集部: その場合の具体的な治療法を簡単に教えてください。 髙井先生: 根尖性歯周炎が原因で痛みが生じている場合は、歯の神経の再治療、いわゆる「再根管治療」が必要です。歯根破折が原因の場合は、どの程度歯が割れているかで対処が異なります。 深い部分で割れてしまっている場合は、残念ながら歯が残せない(抜歯になる)可能性が高くなります。
神経を抜いた歯の痛みを防ぐには? 治療後の予後を安定させるポイント
編集部: 神経を抜いた歯の痛みを最小限に抑えるためには、どのような点に注意したらよいでしょうか? 髙井先生: 今まさに治療中の方は、その期間中は極力その歯で噛まないようにしてください。治療中はとにかくその歯に刺激を与えない・触れないことが痛みを抑えるうえでは大切です。 また、治療中はどうしても違和感や痛みを覚えやすいのですが、あまり気にしすぎると痛みに対する感受性が高くなります。したがって、気にはなると思いますが、極力意識せずに過ごしていただくのも大きなポイントだと思います。 編集部: 治療中はできるだけ「安静にすること」が重要なわけですね。 髙井先生: そうですね。ただ、歯の治療のなかでも神経の治療というのは患者さんにできることが少ない、というのが正直なところだと思います。 むし歯や歯周病の治療は患者さんの協力があって成り立つものですが、歯の神経の治療に関しては歯科医師サイドにゆだねられる部分が多いのが実状です。 したがって、患者さんがコントロールできない分、歯科医の技量が治療の予後やその歯の寿命を大きく左右すると言えます。 編集部: そうすると、やはり初回の治療をどの歯科医院で受けるかも重要なポイントになるのでしょうか? 髙井先生: 仰る通りです。歯の神経の治療に関しては、初回の治療を正確にしっかり行えば成功率が90%以上と高い一方で、そこで失敗してしまうと再発して痛みがでたり、再治療を繰り返したりしてしまいます。 したがって、神経を抜いた歯の予後を安定させるうえでは、初回の「神経を抜く治療」をどれだけ正確に行えるかが大きなカギといえるでしょう。 編集部: 痛みを繰り返さないためには、初回の治療で歯の神経の治療に精通した歯科医を見つけることも大切なのですね。 髙井先生: はい。神経のない歯の痛みに関しては、それが正常なものなのか、問題があるものかを見極めるのは、歯の神経の治療を専門にしている我々でも判断が難しいところです。 その判断を誤ってしまった結果、必要のない治療をして問題がより複雑化してしまうケースも実は少なくありません。したがって、痛みが長引く場合は、歯の神経の治療を専門とする歯科医に相談してみるのも方法の1つだと思います。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 髙井先生: 歯の痛みは軽度のものから日常生活に支障がでるものまで様々ですが、どんな痛みにしろ「一刻も早く痛みを取り除きたい」というのが患者さんの切なる願いだと思います。 一方で、歯の神経に関する痛みは思いのほか複雑で、適切な処置がなされない結果、かえって治りにくくなったり、治療が長期化したりしてしまうことも少なくありません。 したがって、何度治療をしても痛みが引かない、治療した歯がすごく痛む場合は、歯の神経の治療に熟知した歯科医に相談してみることもぜひ検討してみてください。