パンケーキとホットケーキ、どう違う? パンケーキブームでも商品名を変えなかったメーカーの答え
パンケーキのことをなぜ日本では「ホットケーキ」と呼ぶのか――。読者からこんな質問が寄せられました。そもそも、両者の定義とはどんなものなのか。ホットケーキミックスを作っているメーカーに取材すると、日本独特のおやつ文化が見えてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮) 【画像】「ふっくら」喫茶店のホットケーキを作る手順 失敗しないためのコツ
パンケーキの「パン」の意味
そもそも、パンケーキとはどんなものを指すのでしょうか。そして、ホットケーキとは何が違うのでしょうか。 国内で販売されるホットケーキミックスの約3割を生産している昭和産業(東京都千代田区)に取材しました。 「パンケーキは小麦粉などを原料に、フライパンなどで円形に焼いたケーキ全般を指す総称です」 パンケーキの「パン」はフライパンなどの平鍋(pan)が由来となっているそうです。 「ホットケーキというのはパンケーキの一種を指す和製英語で、日本独特の呼び名なんです」 食品の「パン」と混同するのを避けるため、温かい状態で食べることから取って「ホットケーキ」と名付けたと言われているようです。 「コムギ粉の食文化史」(岡田 哲・朝倉書店)によると、1923年に東京の百貨店の食堂で「ハットケーキ」という名前で提供されたのが始まりとされています。 両者に違いはあるのでしょうか? 「明確な定義がある訳ではないのですが、弊社では、適度に膨らんだ昔ながらのふっくらしたものを"ホットケーキ"、海外で一般的な薄焼きタイプや、ふわふわのスフレタイプなどは"パンケーキ"として呼び分けています」とのことでした。 また、ホットケーキは甘いおやつとして食べられることがほとんどなのに対し、パンケーキには甘くないものもあり、食事として食べることもあるという傾向があるそうです。
"ホットケーキ"誕生の歴史
パンケーキの原型が生まれたのは、古代ギリシャまで遡るといわれています。 水と小麦粉で作った生地の両面を焼いた、シンプルなものだったようです。 ここから日本で親しまれるホットケーキが生まれるまでには長い歴史がありました。 製粉会社などで作る日本プレミックス協会のサイトを見ると、詳しい歴史が記されています。 現在のものに近いパンケーキが一般家庭で広く食べられるようになるのは、19世紀の終わり頃から。アメリカでパンケーキ粉が発売されたことがきっかけだったと言われているそうです。 これは協会の名前にもなっているプレミックス、つまり、必要な材料をあらかじめ混ぜた状態のものでした。手軽に調理できるようになったことで、パンケーキの普及につながりました。 日本では、1884(明治17)年に出版された本の中で、パンケーキの作り方が紹介されました。 1931年には日本で初めて「ホットケーキの素」が市販されました。このホットケーキの素は無糖の甘くないもので、商品そのものはあまり浸透しなかったそうです。 日本で本格的にホットケーキやパンケーキが普及するのは、1950年代に入ってからのことでした。 この頃になると、砂糖が入った「ホットケーキの素」や塩味の「パンケーキミックス」が販売されるようになります。 食生活の洋風化とも相まって、一般家庭にも浸透していったそうです。