哀川 翔「男はあんまり余計なことを言わないのがカッコいいな」
ラストカットを撮り終えた瞬間が最も充実感を得られる
俳優として35年のキャリアを持ち、その舞台裏では多くの感慨深い瞬間と挑戦があった。そんな哀川さんが語る、俳優としての最高に高揚感を感じる瞬間とは。 「一番はね、ラストカットを撮った時(笑)。そこに向かってますからね。それでいつも監督に『大丈夫だった?』って聞くんだけど、『OK! 大丈夫!』と言ってくれると『よしっ!』って。その瞬間に『これでまた一本撮り終わったぞ』みたいな喜びが一番ありますね」 それがずっと続いてきたと……。 「俺が俳優を始めた頃は、夜中の2時や3時まで撮影するのが当たり前だったからね。今回は久々に夜中まで撮っていたけど(笑)、今はそれも少ないですよね。改善なのかもしれないけど、時々『これで本当にいいのか?』と思うこともあるし。 今まで200何十本も撮影してきて、本当に終わるのかなっていう撮影も昔はあったけど。でも、終わらない撮影はないからね。みんなには『大丈夫、やってりゃ終わるから』って(笑)。山登りと一緒で一歩ずつ踏みしめながら登っていくと頂上にたどり着くんですよ。その苦労があるからこそ最後の瞬間がいちばんうれしいんだろうね」 哀川さんの姿勢は常にブレず、そのスタイルは一貫して貫かれている。ここに至るまでには迷いや悩みもあったのだろうか?
「芝居に関してはまったく素人から入ったからね。最初は当然ながら、ステージに立っても何をすべきかさえわからない時期がありました。でも、慣れなんですよ。魚釣りと同じで、慣れがすべて。パターンを覚えてルーティンが身につくにつれ、演技も自然とできるようになってくる。最初は手探りでしたが、徐々にその道の理解が深まっていきました。 理解してないでやったら何も面白くないんですよ。もちろん悩みはありますが、それはもっと頑張らなければという前向きな悩みであって。誰もが最初から完璧にできるわけではないけれど、継続し続けることで、自分だけのスタイルや立ち位置が見えてくるんです」 そのスタイルを続けるために普段から気をつけていることを伺うと……。 「特に何か特別なことをしているわけではないです。ただ、日常のルーティンとして、朝早く起きて夜早く寝るぐらいなことで。やっぱりコンディションが一番だと思うから。それを毎日ずっと続けていれば、調子が狂うこともないしね」 そしてひと言。 「こういう話も普段はしないけどね。尋ねられるからするだけで(笑)」 男は黙って行動するだけ。余計なことは言わず、常に最高のラストカットを求め、監督のニーズに応えるだけ。その迷いなきスタイルで俳優道を突き進む哀川さん。やっぱりアニキはカッコいい!