マーケターに使われている AIテクノロジー は?118人に聞いた「AIへの投資と活用法」
方法
Glossy+リサーチは、マーケターによるAIの現在の用途を具体的に考察するために、現時点と今後のAIへの投資と活用法について118人を対象にアンケートを実施した。また、AI業界の幹部との個別インタビューも実施した。
機能向上につれて、計算されたリスクを冒して生成AIを導入するマーケター
年々、AIテクノロジーにおけるもっとも一般的な用途はチャットボットとAIアシスタントになっている。マーケター回答者の大多数(2022年は78%、2023年は51%)が、自社が使用するNLPまたはAIテクノロジーのトップとしてチャットボットとAIアシスタントを挙げている。 (グラフ位置) チャットボットがAI使用のトップとしてマーケターから好まれ続けている理由には、生成型AIの向上に伴い、チャットボットやAIアシスタントの多くがさらに高機能なツールや機能でアップグレードされていることがある。たとえば、最新世代のチャットボットには、さらに適応して人間のような応答を生成できる強化言語モデルが搭載されている。 特に、2022年11月にリリースされたOpenAIのChatGPTは、定期的に更新されているチャットボットのもっとも人気の高いものの1つである。ChatGPTは、9月、新しいマルチモーダル機能のおかげで、「見る」「聞く」「話す」新しい方法が追加され、数日後には、ChatGPTにウェブブラウジング機能が備わったことが発表された。10月にはテキストから画像へのジェネレーターであるDALL-E 3(ダールイー3)がChatGPT PlusとChatGPT Enterpriseに追加されて、ChatGPT内で直接画像を作成する新しい方法が提供されるようになった。 企業はこのような改善点に注目して、ChatGPTを自社の技術に組み込んでいる。たとえば、美容レビューアプリのスーパーグレート(Supergreat)はChatGPTを統合して自社のGRWM.aiチャットボットをデスクトップ上に作成、消費者に美容製品のおすすめや動画を提供している。 ほかの企業も独自のチャットボット対応テクノロジーを持っており、それらは同様にアップデートされている。 Googleは先日、PaLM 2 LLMのアップデートであるGemini(ジェミニ)のリリースを発表した。この新しい大規模言語モデルは、GoogleのチャットボットのBard(バード)に搭載されるようになる。ChatGPTと同様に、企業はBardを自社チャットボットに統合することができる。Bardはチャットボットに注力しているが、Bard関連のAPIにより、企業はチャットボットをEメールなどのGoogle Suite製品に接続して、概要やその他のテキスト結果を生成することもできる。 ChatGPTやほかのLLMのAPIを介して既存のAIテクノロジーやインターフェイスを接続することで、マーケターは自社のチャットボットの機能をレベルアップさせ、顧客へのサービスと顧客エンゲージメントを向上することができる。 マーケターから2番目に多く使われているAIテクノロジーの用途は、コピー生成である。これも生成AIに根ざした用途であり、回答者の43%がコピー生成タスクにAIを使用していると答えた。また、コピー生成には、ウェブサイトや製品リスト、Eメール用のコンテンツ作成から社内KPIレポートの作成まで幅広い用途がある。一例を挙げると、コンテンツ作成プロセスを加速するために、キャンペーンのマーケティングコピー作成に生成AIを使っているストリートウェアブランドのハットクラブ(Hat Club)の例がある。 ハットクラブのeコマース担当ディレクター、ジェイソン・エドワーズ氏は次のように述べている。「当社の最大の課題はマーケティングコピーを常にタイムリーに完成させることだった。驚いたのは、アテンティブAI(Attentive AI)のおかげで、我々が介入して完成させる前にかなり最終版に近い形でコピーが得られるという点だ」。 コピー生成にAIを使っているマーケターのうち、約4分の3(71%)がエディトリアルと消費者対応の目的でコピー生成を使っていると回答した。ただし、そのような目的でAIを使うことにはある程度のリスクが伴う。多くのマーケティング担当者や業界監視団体は、特にAIモデルのトレーニングに使われるデータに関する透明性が欠如している場合、一般向けの生成AIアウトプットにより生じかねない著作権問題を懸念している。 (グラフ位置) OpenAIは著作権侵害に関する多くの訴訟に見舞われており、その中には、7月の集団訴訟もある。弁護士は、ChatGPTやほかの生成AIアプリケーションを動かす言語モデルのトレーニングに使うデータを収集する際、OpenAIが州と連邦政府の著作権法およびプライバシー法に違反したと主張している。 しかし、そのようなリスクにかかわらず、Adobeやシャッターストック(Shutterstock)の画像編集・生成ツールのように、多くの企業が一般向けの生成AIツールを提供しており、マーケターにより使用されている。特筆すべきなのは、Adobeとシャッターストック両社は企業クライアントに補償を提供している。これは、両社の生成AIツールを使った結果として、企業クライアントが著作権関連の申し立てや訴訟に直面した場合、両社がクライアントの費用を負担することを意味する。 現在、大部分のマーケターはEメールや製品コピーの作成などのリスクの低い用途にAIコピー生成を使用している。だが、注目度の高い用途に直接移行しているブランドもある。コカ・コーラは、3月、同社のクリエイト・リアル・マジック(Create Real Magic)プラットフォームを使って、看板で際立つAI画像の制作を消費者に促すキャンペーンを実施。このキャンペーンは、AI生成のグリーティングカードの作成も含め、ホリデーシーズンまで継続された。 マーケターがAIコピー生成を使う現時点での最大の理由は一般向けのコンテンツを作成することであるが、AIによって生成されたコピーを使うと答えた回答者のかなりの割合がB2Bの販売コミュニケーション(46%)、または社内の使用(32%)にも利用しているという。AIがさらに有能なデータ分析ツールになるにつれて、AIの周辺用途の使用が増えると思われる。