マーケターに使われている AIテクノロジー は?118人に聞いた「AIへの投資と活用法」
AIが推進する全面的なデータ分析の民主化
Glossyの調査によると、コピー生成に次いで3番目に一般的なAI用途はソーシャルメディアリスニングであり、回答者の38%がソーシャルメディアリスニングにAIを使っていると答えた。マーケターがこのAI用途に注目しているのは、多くの既存のデータ分析ツールや人間のアナリストよりも情報を高速に分析する能力を得られるからである。 AIがソーシャルメディアリスニングに使用される場合、AIは「いいね」やコメント、投稿タイプなどのソーシャルデータに基づいてトレーニングされ、どのコンテンツが顧客のエンゲージメントを促進するかを予測し、さらに重要なことには、新しく登場する消費者トレンドを浮き彫りにする。従来の方法よりも迅速にこれらのトレンドを察知するAIの能力により、企業は顧客のニーズに迅速に対応し、消費者心理が衰退したり変化し始める前に、その動きを利用したり回避することができるようになる。 ロレアル(L’Oreal)のデジタル・マーケティング最高責任者のハン・ウェン氏は、ロレアルは2023年に美容トレンドの出現に合わせてソーシャルリスニングを強化していると語っている。また、トレンドを特定して対応するまでに最大3カ月かかる可能性があった以前のタイムラインとは対照的に、社内チームを編成して数日以内にトレンドを取り入れたコンテンツ制作を加速させている。 ウェン氏は次のように述べている。「スピード感がまるで違う。現在の当社の目標は、アルゴリズムやコンテンツプラットフォーム、消費行動をめぐる変化によってもたらされる文化のスピードに合わせて、いかに動くかということに集中している。それを実現するためには、まずリスニングの態勢から始めて、次に極めて迅速に対応する能力を社内で構築することが必要だ」。 この数カ月においてAIに関する最大の変化のひとつには、AIツールを構築するマーケターから、社内データに基づいてサードパーティのアルゴリズムをトレーニングするマーケターへのパラダイムシフトがある。ソーシャル会話を分析するAIアルゴリズムをゼロから開発するのは難しい可能性があることを考慮し、大部分のマーケターは現在利用できるオープンソースやライセンスのオプションを選ぶようになっている。AIユーザーの多くは、どのモデルを選ぶかよりも、モデルのトレーニングに使うデータのほうが最終的には重要だと述べている。 「通常、AIについて語られる際、最大の(企業に競争上の優位性を与える)堀はアルゴリズムではない。なぜならアルゴリズムはすべてオープンソースだから」と述べるのは、APIプラットフォーム、パブナブの最高技術責任者、スティーブン・ブラム氏だ。「Googleでさえ『すべて入手して使ってよい』と言っている。アルゴリズムは無料だが、IPこそがデータだ」。 AIは、ソーシャルメディアリスニングで特定されたトレンド以外のトレンドを浮き彫りにするためにも使用できる。販売や広告、顧客レビューのデータなどのソースを使ってモデルをトレーニングできる。また、生成AIは短い時間で膨大な量のデータを選別・分析できるため、マーケターに多くの可能性をもたらしている。 重要なイノベーションのひとつには、現在利用可能な生成AIツールの多くがチャットボットに似た会話型インターフェイスを提供していることが挙げられる。手作業でのデータ処理用に構築されたツールを使う代わりに、データに基づいてトレーニングされたAIモデルは特定のプロンプトに対するテキスト応答の形式で分析を生成することができる。このインターフェイスはデータフォーマットやクエリ言語などのハードスキルセットに取って代わり、以前にはなかった柔軟性を提供している。ユーザーは、自分が求めている結果を理解して、その結果を引き出すための自然言語プロンプトを作成できればよいため、マーケターにとってAIベースのデータ分析への参入障壁が低くなっている。 しかし、実稼働の生成AIアプリケーションを構築するリアルタイムデータ企業、データスタックス(DataStax)のシニアデベロッパーアドボケート、メアリー・グリグレスキー氏は、既存のAIシナリオにおける課題のひとつには拡張可能なデータストレージソリューションを用意することがあると述べている。同氏によると、ほとんどの企業が社内データベースの代わりにプライベートクラウドストレージシステムを使用しているという。プライベートクラウドストレージはコスト効率は高いかもしれないが、社内データベースと同じほどインフラストラクチャーのコントロールはない。AIツールにとってデータの重要性が高まるにつれ、企業は、データを保存する方法と、自社インフラストラクチャーがAIシステムに追いつき、そのシステムの機能を適切に強化できるかどうかについて、より慎重に検討する必要がある。 「たとえると、家の購入のようなものだ。外観で下見をするだろうが、表面下にあるもの、つまり配線類には注意していないかもしれない」とグリグレスキー氏。「そのような舞台裏は非常に重要だ。『家の照明すべてを同時に点けても問題ないだろうか?』『どの配線も負荷テストに合格するだろうか?』と考えなければならない」。 「同じように、AIシステムは非常に多くのデータを処理する」とグリグレスキー氏は付け加える。「大規模な言語モデルには膨大な量のデータが保存される。だが、その規模にかかわらず、自社のドメイン固有の最新データが考慮されていないため、データは十分とはいえない。これらすべてが連携して機能しなければならない。……データはどのようなAIシステムにとっても大きな課題のひとつだ」。