センバツ甲子園 活躍が期待される九州勢の戦力紹介
18日に開幕した第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)には九州から4校が出場。1回戦で、明豊(大分)は第2日第2試合で敦賀気比(福井)と、東海大福岡は第4日第1試合で宇治山田商(三重)と対戦。神村学園(鹿児島)は第5日第1試合で作新学院(栃木)とぶつかる。初日に登場した熊本国府を除く3チームの戦力を紹介する。【藤田健志、黒澤敬太郎】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◆明豊 ◇打線の完成度高く 準優勝した2021年以来の出場となる明豊は打線の完成度が高く、1番木村留偉選手、2番高木真心選手の3年生コンビが引っ張る。共に俊足巧打で、昨秋の公式戦はいずれも打率4割を超え、九州大会準優勝の立役者となった。センバツでは相手からの厳しいマークが予想される。川崎絢平監督は「警戒されている中でどれだけ機能するかが大事」と話す。 チームは昨夏の甲子園にも出場し、じっくりと練習する間もなく秋の大会に臨んだ。そのため冬は基礎練習に重点を置いてきた。山内真南斗主将(3年)は「短所をすべて潰すつもりで意識してきた」と振り返る。目指すは春夏通じて初の優勝だ。 ◆東海大福岡 ◇エース右腕の出来が鍵 7年ぶりの出場となる東海大福岡はエース右腕の佐藤翔斗投手(3年)の出来が鍵を握る。187センチの高身長から投げ込む最速142キロの直球には角度があり、カーブやスライダーも勝負球になる。さらに一冬越えて「自信がついて、手応えがある」とチェンジアップも多投するようになり、投球にバリエーションが増えたのは好材料だ。 前回出場時は、強打者の清宮幸太郎選手(日本ハム)と野村大樹選手(ソフトバンク)を擁した早稲田実(東京)に勝利するなど8強入りを果たした。当時のエースだった安田大将コーチの存在も大きく、井上和翔主将(3年)は「前回を超えていきたい」と過去最高のベスト4以上の成績を狙っていく。 ◆神村学園 ◇脅威のクリーンアップ 神村学園は昨夏の甲子園4強入りメンバー10人が残り、昨秋の公式戦チーム打率3割8分と強力打線が武器だ。大型遊撃手となる3番・今岡拓夢選手(2年)は公式戦打率5割超と大当たり。4番は長打力に秀でる正林輝大選手(3年)が座り「飛距離は出るようになっている」と今季から導入される低反発の新基準の金属バットにも不安はない。5番・岩下吏玖選手(3年)は三振が少なく、3人で脅威のクリーンアップを形成する。 夏の甲子園準決勝から1週間後には秋の鹿児島大会があり、その後はかごしま国体も続くなど慌ただしかったために、冬場は基礎的な練習にじっくり取り組んできた。春夏通じて初の優勝を勝ち取るため、着実にレベルアップしている。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇指導者で7年ぶり甲子園に 東海大福岡コーチ 安田大将さん(24) ◇大舞台楽しんで 自立心養うモットーに 2017年センバツで活躍 強打者に勝利して選抜高校野球大会を沸かせた技巧派が、母校の指導者として7年ぶりに甲子園に戻ってくる。東海大福岡でコーチを務める安田大将さん(24)。正確無比な制球力を武器にした横手右腕は現在、自立心を養う指導をモットーに後輩たちを育てている。【藤田健志】 練習でもじっくりと投手を観察する姿が印象的だ。高校卒業後は関西国際大でも投手としてプレーした。大学4年の時に教育実習を経験し「高校の時から先生や地域の方に支えてもらったので、恩返しできたらいいと思った」と、2022年4月から指導陣の一人として加わった。 安田さんを一躍有名にしたのが17年のセンバツだ。当時の直球の球速は120キロ前後。しかし二つの強みで勝利を呼び込んでいく。一つは大舞台にも物おじせずに、甲子園のマウンドでも笑っていられる強心臓。二つ目は「大げさで究極かもしれないが、(捕手の構えたところに)投げられていた」と語るコントロールだ。 印象的だったのは2回戦で対戦した早稲田実(東京)戦だ。大会屈指のスラッガーとされ、高校通算111本塁打を放ち、現在は日本ハムでプレーする清宮幸太郎選手を、苦手とされる高めの球で詰まらせることに成功。「速い球は投げられないと分かっていて、自分の生きる道はこれしかない」と中学生の頃から身につけた横手投げで、2打席目まで完璧に封じ、11―8で勝利。東海大福岡を過去最高成績となるベスト8まで導いた。 指導者になってからは、選手との会話を重視する。「投球練習を終えた選手が来たら、投げた感じや取り組んだことを先に聞いて、自分の考えを伝えるようにしている。押し付けることがないようにも気をつけます」と語る。試合でマウンドに上がれば、投手は自身の疲労などを把握しながら、自らの判断で投球することが問われる。考える力を選手が身につけるために、互いに意見を交わしながら選手に合った最適な方法を考えている。 面白いアドバイスもある。エースの佐藤翔斗投手(3年)には昨秋には「140キロの変化球投手になれ」と、しきりに伝えていた。直球の時に力んでしまい、コントロールを乱す癖を修正するために、「曲がらない変化球が直球」という意識を持ってもらうことで、力みを取り除く手法だ。 東海大福岡は大会第4日の第1試合で宇治山田商(三重)と対戦する。安田さんは試合前練習のノッカーとしてグラウンドに立つ予定だ。「楽しみと言えば楽しみだが、まだ実感はない」と語る一方で、「選手はどれだけ力がついて成長しているのか(大舞台を)楽しんでほしい」。教え子たちのプレーを待ちわびている。