トヨタ紡織のルーキー・小渕稜央 国立大出身ランナー、箱根駅伝を走った”駅伝エリート”たちに挑戦へ
来年1月1日に群馬県庁発着で行われる全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に出場するトヨタ紡織陸上部(愛知県)のルーキー・小渕稜央(22)。予選の中部実業団駅伝(11月)ではアンカーの7区で実業団駅伝デビューを果たし、優勝のゴールテープを切った。国立の岐阜大出身のランナーが、新春の上州路で箱根駅伝を走った”駅伝エリート”たちに挑戦する。 ”地方大学”の魂を胸に宿す。駅伝界では、関東の強豪大学が集う箱根駅伝が最も注目される大会。ニューイヤー駅伝では県立高校、国立大学で競技をしてきた小渕にとって無縁だった箱根を走った選手と競うことになる。「大学まで厳しい環境でやってきた。関東の大学出身の選手と戦えることを示したい」と意気込む。 東海地方の大学が目指す最高峰の全日本大学駅伝には、部員が足りず1~3年時は予選会にも出場できなかった。アルバイトで生活費や遠征費などを稼ぎ、練習時間も限られた環境。監督は長距離の専門ではなかったため、動画や本を参考にしてメニューも自分で考えた。 決して恵まれた環境ではなかったが、努力の原動力は向上心だった。陸上を始めたのは、学業で進学を決めた津高から。「何となくスポーツをしたい」と部活選びをする中で勧誘を受けて陸上部へ。高校総体で県の上位に入っても東海地区大会では歯が立たず「悔しかった」。地元の津市がコースの全日本大学駅伝6区を走ることを目標に、岐阜大で競技を続けることにした。 大学では2年時の日本インカレ1500メートルで全国大会デビューし、3年時には東海学連選抜のメンバーとして念願の全日本大学駅伝6区を走った。目標を少しずつ達成する手応えとともに「まだまだ伸びる」と自信をつけた。 トヨタ紡織はニューイヤー駅伝に27度の出場を誇り、箱根ランナーも多数在籍するチーム。自らの意志で初めて強豪チームに加わり、練習のハードさ以上に大きな充実感を覚えている。「練習時間を十分確保してもらえて、食事も決まった時間にいいものを食べられる。全てがプラスになっている」と環境に感謝する。実業団での経験を踏まえ、自身の学生時代と似た境遇の選手の参考になるように記録を残す。「note」に学生時代の苦労や記録を伸ばすために取り組んだことをつづっている。 11月にニューイヤーの予選となる中部駅伝でアンカーを任された。チームは3年ぶり6度目の優勝を飾ったが、個人としては区間5位。本戦には「まずはメンバー入りから。大学までは駅伝チームを組むことも難しかったので、全国でトップを目指せるチームで貢献したい」。自らの走りで多くの地方ランナーに希望を与える。 ▼小渕稜央(こぶち・りょう) 2002年3月24日生まれ、津市出身の22歳。166センチ、57キロ。中学時代はサッカー部で、津高から陸上部。岐阜大2年時のインカレ1500メートルで全国大会デビュー。駅伝では全日本大学駅伝に東海学連選抜に選ばれて3年は6区、4年は1区で出走。今春トヨタ紡織に入社し、5000メートルで13分52秒32、1万メートルで29分2秒91と自己ベストを更新。競技生活で最もうれしかったことは、大学4年時の東海地区駅伝で岐阜大としての入賞。「陸上をチームスポーツだと実感できた大会」
中日スポーツ