『ふつうの軽音部』ELLEGARDENは作品の象徴として選曲。原作者が楽曲セレクトやキャラクター造形を語る【クワハリ先生インタビュー】
――え。あの復帰、予定外だったんですか。 クワハリ:フェードアウトしたように見せかけて、ちょくちょく出番を作ろうかなとは思っていたんですけど、復帰までは考えてなかったですね。でも、部活にいた方がやっぱり動かしやすいし、話が面白くもなるので、結果的にはよかったなと感じています、今は。 ――ヨンスは脇役ですけど、読者の一部にものすごい刺さり方をしています。そもそも主人公の鳩野もですが、数々の印象的なキャラクターを生み出すときは、どこから考えていくものなんですか? クワハリ:キャラは舞台とセットで考えることが多いです。たとえば鳩野だったら、舞台を大人数の、そんなに強豪でもない軽音楽部と決めたあと、その舞台で、主人公としてどんなキャラクターが一番動かしやすいかを考えていった。男より女の子の方が動かしやすそうだな……というのは、そんなに論理的に考えたわけじゃないんですけど、あとは、めちゃくちゃギターの才能があるよりは初心者の方がいいとか。あとはバンドものなので、バンドって枠があるとちょっと考えやすいんですよ。 ――どういうことでしょう? クワハリ:別に経験者でもない素人の女の子が主人公だとして、バンドのメンバーはどうしようか? と考えていくと、周囲がなんとなく決まっていく。主人公が割と根暗なので、陽キャっぽい子がいた方がいいよな、とか。キャラの作り方はそんな感じですかね。 ――具体的なバックボーンはどうですか? たとえば鳩野だと、両親が離婚をして、関東圏の川崎から大阪に移ってきた。そのことを強く意識してはいないものの、どこか心に影を落としている部分がある。そういう掘り下げを、どう進めたのか。 クワハリ:これはまず、僕が関西にいるんですけど、関東の人が関西で暮らしている様子が結構好きなんです(笑)。あんまり多いわけではないですが、なんかちょっと応援したくなるんですよ、個人的に。たとえば東京の人が大阪で暮らしていたら、「大阪みたいな雑多なところで暮らして大変そうだな~」とか勝手に思い入れてしまう(笑)。だから、大阪が舞台で標準語の、関東の人間を出したかった。それがまず先にあって、となると、引っ越してきた理由があるだろうな、と。あと、引っ越してきたのもそんなに前じゃなくて、中学校ぐらいじゃないか? と。 ――小さい頃に引っ越したら、おそらく関西弁に染まりますもんね。 クワハリ:そうやって中学のときに関西に来たことにすると、きっとしばらくは馴染めなくて嫌な思いをしたんだろうな、とか想像が膨らんでいく。そうやって一つの要素から、だんだんとキャラクターに肉付けしていく感じですね。 ――ちなみに鳩野は、具体的にイメージされているボーカリストはいるのでしょうか? クワハリ:ないわけじゃないんですけど、ガチガチにイメージを固めて描いているわけではないですし、ここで言ったものが「正解」みたいになるのはあんまりよくないと思うので、言わないでおきます。……あ、ただ、「この世のものとは思えないような変な声」みたいな感じではないと思います。高校生ぐらいだと、ちょっと変わった声質の、クセがあるボーカルに対して、「変な声!」って割と素直に思うような気がするんですよね。ぱっと聞くとちょっと「ん?」ってなるような、でも、慣れると別に全然変だなと思わないような声をしたボーカリストって結構いると思うんですけど、鳩野もそうした人たちと同じようなイメージです。