マイナーチェンジしたGクラスの高性能版G63に試乗。「ゲレンデ」はどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか【試乗記】
好きな人も、嫌いな人も気になるのがメルセデス・ベンツのGクラス。V8エンジンを積む最強モデルに試乗した。 【詳細写真】メルセデスAMG G63
2024年にマイナーチェンジしたGクラス
クルマ好きの間で好き嫌いがわかれるモデルのひとつが、メルセデス・ベンツのGクラスだろう。 ゲレンデ否定派(以下、否)「なんであんなに乗り心地の悪いクルマに、2000万も3000万も支払うのか」 ゲレンデ肯定派(以下、肯)「1979年に初代モデルが登場して以来、悪路の走破性を追求するブレのない開発姿勢から、あの乗り心地になっている」 否「では伺うが、ゲレンデ乗りの何%が、フロント、センター、リアの3つのデフロックを駆使して悪路を走るのか」 肯「300m防水のダイバーズウォッチと同じで、“できるけどやらない”と、“できない”の間には天と地ほどの差がある」 といった具合に、議論は白熱する。ま、0点をつける人と100点満点を与える人にわかれるくらい個性的なクルマだということでもある。 このGクラスが、2024年にマイナーチェンジを受けた。ゲレンデはどのように変わったのか、あるいは変わらなかったのか。排気量4ℓのV型8気筒ツインターボエンジンを搭載した高性能版、メルセデスAMG G63に試乗した。
暴れ馬をねじ伏せる
V8エンジンを始動してまず行うことは、「ハーイ、メルセデス」と話しかけて、ナビゲーションの目的地や空調、オーディオをセッティングすることだ。Gクラスに、初めて音声コマンド機能のMBUXが備わったのだ。 アクセルペダルに足を載せて、軽く力を込めるだけで、G63はすーっと滑らかに加速する。それには理由があって、このV8ガソリンも直6ディーゼルも、エンジンのスターターとモーター、そして回生ブレーキによる発電という“一人三役”を担うISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が備わるようになったのだ。 ISGは最高出力こそ20psとそれなりであるけれど、クルマを押し出す力であるトルクは最大で208Nmも発生する。軽自動車が60Nm程度であることを考えると、停止状態からの発進加速が力強く、スムーズになっていることに、ISGが大いに貢献していることは間違いない。 ISGは燃費向上のためのシステムであるけれど、発進加速を滑らかにしたり、変速をスムーズにしたり、エンジンのフィーリングやパフォーマンスを洗練・向上させることにも寄与している。事実、マイナーチェンジ前、つまりISGが備わらないモデルに比べて、0-100km/h加速のタイムは0.1秒短縮して、4.4秒となっている。 “ゼロヒャク”が4.4秒ということは、ポルシェ911カレラTの4.5秒より速いということ。車重2.5トンを超える超ヘビー級のG63をフル加速させると、V8の咆哮が車内に満ちて、とんでもない迫力になる。同時に、ドライバーは、俺はこの暴れ馬をねじ伏せているんだという満足感を得ることができる。