マイナーチェンジしたGクラスの高性能版G63に試乗。「ゲレンデ」はどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか【試乗記】
オフロード性能優先は譲れない
では、乗り心地はどうか? マイナーチェンジによって、かなり乗用車っぽくなったのは間違いない。路面コンディションや走り方に応じて足まわりのセッティングを変えるアダプティブダンピングシステムに、AMGアクティブライドコントロールサスペンションが組み合わされるようになり、特に中高速コーナーが連続するような場面では身のこなしが滑らかさを増した。 ただし、市街地や山道で感じる、新品のリーバイス501のようなゴワゴワ感は依然として残る。 SUVは大きくふたつにわけることができ、そのひとつは本格的なオフロード走行を想定したラダーフレーム構造だ。これは屈強な梯子型のフレームにサスペンションを直接取り付ける堅牢な構造で、悪路での耐久性が高いいっぽうで、路面からの衝撃が乗員にダイレクトに伝わる(=乗り心地が悪い)という弱点がある。 ラダーフレーム構造を採用するのはGクラスのほかにジープ・ラングラーやトヨタ・ランドクルーザー、スズキ・ジムニーなど、いまや少数派。スタイルはSUVであっても、乗用車と同じフレーム構造を採用するモデルが多くなっている。 新しいGクラスも、圧倒的な悪路走破性能と引き換えに、基本骨格とボディが別々に動くように感じる、ラダーフレーム構造らしい乗り心地は引き継いでいる。つまりG63のゴワゴワした乗り心地は、オフロードでの強さを徹底的に追求するという、頑固一徹な哲学の表れなのだ。乗り心地が悪いというよりも、頑固なクルマなのだ。 というわけで冒頭の議論に戻って、「オフロード最優先なのはわかるけれど、新車から手放すまで一滴の泥も着かないでしょ?」ということになる。ただし、バタバタとするタイヤをなだめながら、V8の暴力的なパワーをコントロールしていると、クルマと一対一で向き合っている、タイマン張って勝負している、という気になるのは事実だ。なんでもかんでも便利になった世の中で、成功した方がゲレンデを選ぶのは、ヒリヒリするほどのダイレクト感がたまらない、という理由もありそうだ。 ゲレンデ否定派のなかには、「だって都市部はG クラスが多すぎる」という主張する人もいる。今回、45年前の初代モデルとほとんど変わらないGクラスを見ながら、多すぎることは気にならないと感じた。 仮に、超豪華メンツが揃った夢の夏フェスが行われたとする。 B’zも、ガンズ・アンド・ローゼズも、レッド・ツェッペリンも、イーグルスも、ギタリストはみんなギブソンのレスポール。でも、「レスポール多すぎ」という感想を持つ人はいないはずだ。おそらくみなさん、「レスポール格好いい」と思うはず。同じように、どれだけ増えてもゲレンデは格好いい。形を変えずに作り続けてきたメルセデス・ベンツの勝ちだ。 ー メルセデスAMG G63 全長×全幅×全高:4690×1985×1985mm ホイールベース:2890mm パワートレイン:4ℓV型8気筒ターボ エンジン最高出力:585ps エンジン最大トルク:850Nm モーター最高出力:20ps モーター最大トルク:208Nm トランスミッション:9段AT 駆動方式:4輪駆動 価格:2820万円~(税込)