XR領域での日本の存在感と今後の展望【SENSORS】
XR(クロスリアリティ)とは、現実と仮想の世界を融合し、新たな体験を実現するテクノロジーだ。現状、XR業界において、日本のプラットフォームやコンテンツは、どのような立ち位置にあるのだろうか。XR領域で活躍中のアーティストや、XRデバイスの開発を手掛ける会社の代表ら3名が集まり、現時点での課題や今後の展望について語り合った。
■VRやAR、XRを受け入れる土壌がある
ViXion株式会社 テクノロジー・エヴァンジェリストの近藤 義仁さん、通称「GOROman」は、かつてMeta社にパートナーエンジニアとして勤務。その経験に基づき、巨大プラットフォーマーが日本をXR市場としてどう見ているかについて、次のように説明する。
「かつてMeta社は日本にはXR市場がないと見ていました。『Meta Quest(Meta社のVRヘッドセット)』を日本で販売する予定がなかったのです。しかし私自身は、日本にはVRやARを題材にしたコンテンツが多いと捉えていました」 「例えば『ソードアート・オンライン』『.hack』『電脳コイル』といった作品などがその一例です。このようなコンテンツに着目し、日本には、VRやARを受け入れる土壌がある、コンテクストを共有しやすいのでは?と考えた私は、Meta社に対してMeta Questを日本で販売するべきだ、と繰り返し説得しました」 「その結果、日本でも販売が始まって、蓋を開けてみたら家電量販店さんでも売られるようになるなど、大きな反響を獲得できました。プラットフォームの力で言えば、GAFAが強力ですが、日本はコンテンツという切り口ならば、XR領域でファンを獲得し、存在感を示していけるのではないか、と考えています」 ◇ VRハードウェア開発・販売を手掛ける株式会社 Shiftall(シフトール)代表の岩佐琢磨さんも、「カルチャーの側面では、やはり日本は強い」という考えを示す。
「例えば海外で開発された、あるVRデバイスがあります。もともと人体に装着することは考えていなかったようなのですが、日本のユーザは体にデバイスを装着して自分の体の動きの通りにアバターを動かす使い方を編み出してしまい、それがそのVRデバイスの世界で当たり前の使い方になってしまった。現実空間とバーチャル空間の身体の動きを同期させてなりきる、といった使い方です」 「新たなコンテンツを作り出していくのが非常に得意ですから、その点にかなり期待しています」