考察『光る君へ』48話「つづきは、またあした」まひろ(吉高由里子)の新しい物語へと三郎(柄本佑)は旅立つ「…嵐がくるわ」最終回、その強いまなざしの先に乱世が来ている
誰しもが一人で逝かねばならぬ
まひろは乙丸を伴って旅立つ。都から遠く離れた地を老いた主従がゆく……。 ふたりを現世に留めおくもの、縛るものはもうなにもない。これは死出の旅だ。 まひろの姿に、小野小町や清少納言など、平安時代の著名な女性たちの最期を語るいくつかの伝説を思い出す。落ちぶれて老醜を晒し、旅の果てに孤独な死を迎えただの、野ざらしのしゃれこうべとなっただの……。はっきりとわかっていないのをいいことに、まるで美しかったこと、賢かったことへの罰のように哀れな末路として語られるのだ。 「やかましいわ」と、ずっと思っていた。独りで死ぬことの一体なにがそんなに哀れだというのか。女に限らず、どうせ死ぬときは誰しもが一人で逝かねばならぬのだ。 戻らぬ旅を自ら選び山野を歩くまひろに、それでこそ私達のヒロイン! と、喝采を送った。 まひろと乙丸を追い抜いた騎馬武者の中に、双寿丸(伊藤健太郎)がいる。 双寿丸「東国で戦が始まった」 そうだ、長元元年(1028年)というテロップがあった。上総国、下総国、安房国(現在の千葉県)で平忠常の乱が起こった年だ。この乱で武功を立てる河内源氏の子孫が、のちの源頼朝。武士が統べる世に繋がってゆく。 騎馬武者たちの背を見送ったまひろは、 「道長様。……嵐がくるわ」 踵を返すことなく、戦が始まったという東へ進んでゆく。 これからの乱世を見届けるがごとく、強いまなざしで。****** 最終回までドラマレビューを書き続けることができました。毎週読んでくださった皆さんと、一年間、美しい絵で盛り上げてくださった南天さんのおかげです。 本当にありがとうございました。そして、お知らせです。2025年の大河ドラマ『べらぼう~~蔦重栄華乃夢噺~』のドラマレビューも引き続き、こちらクロワッサンオンラインで連載することとなりました! 南天さんにもまた一年間、ドラマ絵でご一緒いただきます。ありがたい…… これもひとえに皆さんにごひいき賜ったからこそ。重ねてお礼申し上げます。 『光る君へ』は作品を生み出す女・紫式部が主人公でしたが『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では作家の生んだ作品を世の中に発信する男・蔦屋重三郎が主人公です。来年は観ている間に、創作に打ち込んだまひろ、クリエイターを後押しした道長、一条帝(塩野瑛久)を思い出す場面がきっとあるはず。ぜひご覧ください。 初回放送は来年1月5日。今度は江戸時代でお会いしましょう! ******************* NHK大河ドラマ『光る君へ』 脚本:大石静 制作統括:内田ゆき、松園武大 演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、見上愛、南沙良、岸谷五朗 他 プロデューサー:大越大士 音楽:冬野ユミ 語り:伊東敏恵アナウンサー *このレビューは、ドラマの設定をもとに記述しています。 *******************
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