『DAYS』安田剛士の“新感覚”新選組ストーリー。1月11日から第2クールに突入するアニメも好調! 『青のミブロ-新選組編-』をレビュー【書評】
『Over Drive』や『DAYS』などの人気スポーツ漫画を手掛けてきた安田剛士氏が現在連載中の『青のミブロ-新選組編-』(講談社)は、「ミブロ」こと壬生浪士組(および新選組)を題材にした歴史漫画である。2024年10月からアニメ化、2025年1月11日には第2クールがスタートする『青のミブロ』はシリーズの第一部に相当し、原作では八月十八日の政変(文久の政変)を経て、会津藩から「新選組」の名を拝命するまでが語られた。そして第二部の本作『青のミブロ-新選組編-』では、発足直後の新選組の活動が描かれていく。
本シリーズの主人公・ちりぬ におは京都に住む13歳の少年であり、ふとしたきっかけから壬生浪士組に身を寄せることになる。本作の特長は、主人公が活躍する活劇というよりは、におが歴史上の人物たちの動向をいちばん身近な立場で目撃する、という構図を取っている点にある。歴史に名を残す英雄ではない、一町人(にお)の目に映る近藤勇、芹沢鴨、土方歳三らは、振り幅のある表情を見せてくれ、実に人間臭く魅力的だ。また、キャラクター同士の掛け合いによって関係を紡いでいく過程が丁寧に描かれ、既存の歴史物の定型にハマらないフレッシュな人物像が活写される。そのおかげで、史実をベースにした作品ながらも、フィクションならではの自由な発想を取り入れたキャラクタードラマが楽しめ、登場キャラクターへの愛着を深めていけるだろう。 本作『青のミブロ-新選組編-』の冒頭では局中法度(隊士に規律を守らせるための“鉄の掟”)が制定され、烏合の衆ともいえる浪士組が「新選組」としてまとまりを見せていく点にも注目したい。クセの強いキャラたちによって組織がオーガナイズされていく高揚感は、さながらスポーツのチームが形成されていくようでもあり、さすがはスポーツ漫画のトップランナーならではの手腕といったところ。「三匹の狼(にお、はじめ、太郎)」たちがライバル心を剥き出しに切磋琢磨し、あるいは沖田総司や永倉新八らと関わりながら成長していく様は、少年漫画らしい熱い青春群像劇となっており、その様子は1巻で開催される剣術大会に顕著である。
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