大ヒットチョコの「ブラックサンダー」、「不思議な売れ方」をしてきた29年のスゴい歴史
いい影響を世の中に与えていける会社に
遊び心のようなものは、有楽製菓にずっと流れてきたカルチャーかもしれない、と感じています。昔の商品を見ても、なんでこんな名前をつけたのか、というものが多い。 豚型のチョコ「子豚のファッション」、ビスケットにチョコレートをかけた「リングコング」、骨の形をした「とんこつチョコ」。「おしゃれタイムズ」に「米米エブリバディ」。なんだかよくわかんないんですよね(笑)。でも、なんだか面白い。 「ブラックサンダー」のパッケージにある「おいしさイナズマ級!」も、よく考えたらよくわからないし、かつては「若い女性に大ヒット中」と謎のフレーズがパッケージに書かれていたことも(笑)。 でも、こうした遊び心があるから話題にしやすいし、心にも刺さっていく。そんな楽しさを持っている商品だと思っているんです。 売れているので、もちろん真似されたこともあります。ただ、この価格でこのクオリティのものを作ることは、そう簡単ではありません。しかも、謎の情緒的な価値もある。これは絶対に真似はできないんです。 すでに海外展開も行っていて、台湾やタイ、香港、韓国、さらにはアメリカでも販売しています。アメリカで言われるのは、「ヘルシー」の言葉です。ココアクッキーで苦味もあり、甘さも控えめだからでしょう。 世界では、カカオ生産をめぐる児童労働も問題視されています。これをなくしていくことも、メーカーとしての使命だと考えていて、'25年までにチョコレートのサステナブルな原料への切り替えを進めています。日本でそれがスタンダードになっていくために、「ブラックサンダーが切り替わったんだよ」と話題になったらと思っています。 もっというと、有楽製菓の業界における影響力はまだまだ小さい。会社として、もっともっと成長していかないといけない。今年の年末に向け、新しい工場を建設中ですが、いい影響を世の中に送り出していくためにも、売り上げ規模を大きくしなければ、と考えています。
上阪 徹(ブックライター)