大ヒットチョコの「ブラックサンダー」、「不思議な売れ方」をしてきた29年のスゴい歴史
言葉にできない情緒的価値があるのでは
学生に必要とされる商品を取り揃える生協で、いろんな無茶な要望にウイットの効いた返答をして話題になり、書籍にもなった「生協の白石さん」がブログで取り上げてくださったのが、'06年。 「ブラックサンダーを置いてください」という声があったようなんですね。これが話題となり、全国の大学生の間でも知られるようになっていきました。 爆発的なヒットが始まったのは、その後の国際スポーツ大会でした。その大会に出場したある選手の「現地に持ち込むほどの好物」というコメントが、メディアで大きく紹介されました。 これは本当に偶然だったんですが、ここから問い合わせが殺到して、作っても作っても注文に間に合わないような状況になるんです。店頭に出しても、すぐになくなってしまう。「ブラックサンダー」が貴重なお菓子として、騒ぎになってしまった。 ラインを増やしたり、日勤夜勤で作ったり、残業したりして丸一日工場を動かしたそうです。こんな状況が'11年に新工場ができるまで、しばらく続きました。 実は私は「ブラックサンダー」を、大学院時代まで知りませんでした。研究室の後輩から「これ、知ってますか?」と差し出され、裏面を見たら「あ、これ実家だ」と。彼はびっくりして「めっちゃ流行ってるんですよ」と。 '10年に入社すると、とにかく全社員が必死で注文に応えようと奮闘していました。それをサポートしつつ、社長だった父に命じられたのは、マーケティング部を立ち上げることでした。 「ブラックサンダー」がなぜこれほど愛されているのかを研究し、それを理解して、さらに発展させていこう、と。 独自のおいしさや価格もあるんですが、「ブラックサンダー」にはもう一つ、言葉にできない情緒的価値があると思っているんです。そうじゃないと説明がつかない。だから、その謎の価値をより高めていくことが大事だろう、と。 バレンタインの「一目で義理とわかるチョコ」なんて企画もその一つ。「ブラックサンダー」らしい、と面白がって支持してもらえました。いろんなコラボレーションを行っていますが、その際にも独自の世界観を大切にしています。