アルツハイマー病のリスク、母親の発症とより強く関連する傾向 研究結果
遺伝を巡る謎は、解明に一歩近づいた?
母親がアルツハイマー病になった場合の方が、子がこの病気を発症するリスクが高くなることは、「X染色体に特有の違いに関連しているのではないか」と指摘されている。 研究者らは、母親から受け継ぐX染色体は、特定の遺伝子をオン、またはオフにするエピジェネティックな変化に、より影響を受けやすいのではないかと考えている。 また、2本のX染色体を持つ娘の場合、父親から受け継いだX染色体の遺伝子が不活性化されていることは、過去の研究で確認されている。そのため、そのX染色体に何らかの変異が起きていても、それは子にほとんど、またはまったく影響を及ぼさない可能性があるとみられている。 そして、遺伝についてはミトコンドリアDNAの変異が関連している可能性も指摘されている。母性遺伝するミトコンドリアDNAに変異が起きれば、子はそれを受け継ぐことになるためだ。 ただ、ミトコンドリアDNAの突然変異がどのように子に影響を及ぼすのかについても、それを明らかにするためには、さらなる研究が必要だ。 そのほか、新たに発表された論文の著者らは、研究結果にはいくつかの社会的要因が影響を及ぼしている可能性があることも挙げている。女性の寿命は以前から男性よりかなり長く、認知症の症状が現れるまで生存する男性は、女性より少なくなっている。 いずれにしても、これらの研究結果は、アルツハイマー病がいかに次世代に受け継がれるのかという謎の解明に、私たちを一歩近づけていると考えられるだろう。
William A. Haseltine