崖っぷちの石破氏が身構える内閣不信任案 少数野党なら通常国会は攻防激化
自民党の派閥裏金問題を最大の争点とした総選挙で、自民党は惨敗。同じく議席を減らした公明党と合わせても与党は過半数を割り込んだ。それでも石破茂首相は続投する考えだが、自民党内の批判と野党の攻勢にさらされ、政権は崖っぷちに立たされている。AERA2024年11月11日号より。 【図表を見る】「自公の議席が過半数を下回った」はこちら * * * 10月27日に投開票された総選挙(定数465)で自民党は公示前勢力(247)から大きく議席を減らし、191議席となった。公明党は石井啓一代表が落選するなど32議席から24議席に後退。自公の計215議席は過半数(233)を下回った。 敗因は明らかだ。裏金問題に対する有権者の反発である。1年前に発覚した裏金問題は(1)安倍派を中心とする自民党の衆参両院議員ら八十余人が政治資金収支報告書に記載されていないパーティー券購入代金のキックバックを受けていた(2)関係議員は十分な説明をせず、「記憶にない」「秘書に任せていた」という反応を繰り返した(3)再発防止策としてパーティー券購入の公開基準引き下げなど関連法の改正が行われたが、自民党から幹事長に年間10億円も渡されて使途が明らかではない政策活動費も事実上、温存されるなど不十分な内容だった──。国民の批判はやまず、岸田文雄首相は支持率が低迷し、総裁選不出馬・退陣に追い込まれた。 ■「裏金議員」28人落選 石破首相は総裁選に勝利して岸田氏を引き継いだ。総選挙に向けて、裏金問題に関わった自民党議員46人のうち9人を非公認、34人を公認でも比例区との重複立候補を認めないと決めた(3人は離党や党員資格停止で無所属)。しかし、これも野党からは「甘い対応」と批判された。選挙戦の終盤には、非公認の候補者でも、所属する自民党の政党支部に対して公認候補と同額の2千万円が支給されていたことが発覚。石破首相は信頼回復に向けてリーダーシップを発揮できないまま、自民党への逆風はさらに強まった。 東京都内の選挙区で立憲民主党の候補に優勢を保っていた自民党の中堅は、この報道の直後に「逆風が増している。追い抜かれるかもしれない」と嘆いていた。実際、この自民党候補は選挙区で競り負けた。 総選挙では「裏金議員」46人中28人が落選した。下村博文元文科相、高木毅元国会対策委員長、丸川珠代元環境相、武田良太元総務相らだ。一方でしぶとく勝ち残ったのは、いずれも経産相経験者の萩生田光一、世耕弘成、西村康稔の各氏、松野博一前官房長官ら18人だった。自民党は萩生田、世耕、西村各氏らを国会内の会派に加えることで国会勢力の上乗せを狙っているが、それでも自公の過半数にはほど遠い。