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■薩摩藩ゆかりのワイナリー、残る刀とは?
ワイナリーを一望できるすばらしい眺めのテイスティングルームで、カリフォルニアワインらしい果実味豊かでみずみずしいシャルドネを味わいながら、ここが薩摩藩士であった長沢鼎(ながさわかなえ)が開いた「ファウンテングローブ・ワイナリー」の一部を引き継いでいることを聞いた。 長沢は本名を磯永彦輔といい、幕末に薩摩藩から西欧文明を取り込むという密命を帯びて、13歳で留学生として英国に派遣された人物。幕府により海外渡航が禁じられていたため、与えられた変名である。そこで出会った米国の宗教家トーマス・レイク・ハリスと共に渡米し、ワイン造りを学んだ。 そして、彼と共にこのサンタローザの地に移り「ファウンテングローブ・ワイナリー」を開き、後にはカリフォルニアのワイン王やバロン・ナガサワとまで呼ばれるほどに成功を収めた。 没後に荒廃してしまった長沢のワイナリーをよみがえらせたのが「パラダイスリッジ」なのだ。現当主のウォルター・ビック氏は、長沢のワイン造りに敬意を払い、長沢の名を冠したワインも造っている。その人生やワイナリーの歴史を展示した部屋もあり、そこには一本の茶色になった刀が大事に飾られている。 この「パラダイスリッジ」も2017年の山火事でかなりの部分を焼失したところから立ち直って、2019年に再開したのだそう。その焼け跡から見つかったのがこの刀。感銘を受けるカリフォルニアで出会ったサムライ魂の象徴だった。 文:小野アムスデン道子(ライター)
小野アムスデン道子
旅行ガイドブック『ロンリープラネット日本語版』(メディアファクトリー)の編集を経てフリーに。東京と米ポートランドのデュアルライフを送りながら、国内外の旅の楽しみ方を中心に、食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース。日本旅行作家協会会員。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。