新紙幣の顔、渋沢栄一の日本酒誕生 旧居、東京・飛鳥山で〝奇跡の酵母〟発見 近ごろ都に流行るもの
7月3日に発行される新紙幣。日本の近代化を導いた実業家、渋沢栄一(1840~1931)の新一万円札が話題になるなか、後半生を暮らした東京都北区が盛り上がっている。渋沢邸跡のある飛鳥山で採取したオリジナル酵母によるゆかりの日本酒「飛栄」が完成。クラウドファンディングの先行販売を実施中で、新紙幣発行後に区内店舗での販売が始まる。お札の顔に決まった5年前からプロジェクトを進めるなか、酒造に好適な「飛鳥山酵母」が奇跡的に発見され、発行に間に合ったという。渋沢翁(おう)のご加護なのか!? ■観光協会に信金職員、産学連携で実現 JR王子駅に隣接する飛鳥山を登ると大正14年築のモダン建築、青淵(せいえん)文庫が現れる。渋沢の傘寿と子爵昇格を祝って建てられた国指定重要文化財である。 飛鳥山で採られた酵母で醸した酒は、渋沢が胸いっぱいに吸い込んでいたであろう、健やかな緑の息吹を感じる。雑味が全くない上品な口当たりと、甘めの果実の香りが印象的だ。 6月21日まで「マクアケ」でクラファンを実施中。純米大吟醸が1万円、純米吟醸との2本セットが2万円(各720ミリリットル瓶、送料別、ナンバリング証明書付き)など。目標の約3倍の応援購入を達成している。 「限定生産のプレミアム酒ですが、今後は同じ酵母を使って手頃なお酒の開発、酵母を活用したパンなどにも構想が広がっています」。プロジェクト主体の東京北区観光協会事務局次長の中林徹さん(44)が語った。7月3日以降、飛鳥山おみやげ館など区内店舗での提供が始まる。 「あまり知られていませんが、北区は日本酒の聖地」と、同協会のシェフ日七(ひな)さん(29)。「飛鳥山の近くには築120年の旧醸造試験所第一工場(国重文)の赤レンガ建築が残る。明治から平成にわたり鑑評会が開かれ、杜氏(とうじ)らが研修を受けて全国の蔵へと技術を持ち帰った。渋沢翁のお酒を通じて聖地の物語を紡ぎ、新たな歴史を刻みたい」 ◇