今市隆二とØMIが語る、三代目 J SOUL BROTHERS『ECHOES of DUALITY』全曲解説
11月16日からスタートしたドームツアー「三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2024 “ECHOES OF DUALITY”」と連動する形でリリースされた最新アルバム『ECHOES of DUALITY』。全10曲すべて新曲で、ヒップホップ/R&Bシーンで活躍しているプロデューサーやクリエイターが多数参加。サウンドのフォーマットは新しいのに、三代目 J SOUL BROTHERSの陰と陽の個性をあらためて掘り下げたような、ある種原点に向き合う構図になっているのも面白い。かつてJ-POPの頂上にいた三代目が、自分たちの置かれた環境に甘んじることなく、音楽的な進化をみずから選んだのはなぜか? ボーカリストの今市隆二とØMIにオンラインでインタビューを実施した。 【写真】今市隆二・ØMI ーアルバム『ECHOES of DUALITY』は、三代目のターニングポイントと言ってもいいくらいの大きな変化を感じさせる作品ですが、2024年3月にリリースした前作『Land of Promise』から今作までの間、グループにはどのような動きがあったのでしょうか。 ØMI:次の作品を制作するにあたって、グループとして新しいコンセプトを掲げたいよねっていうのは口々に話していました。ただ、これだけのキャリアがあると、やっていないことを探す方が難しくて。その中で自分たちにできるのは、音楽面でもビジュアル面でも、新しいクリエイターを招集して新しい形のものを作ることだなと。アルバムでは全曲で異なるプロデューサーを迎えて、彼らに今の三代目がどういう音楽をやるべきなのかを示してもらい、それに染まっていく過程を見せるという意図を持ちながら制作していきました。これからドームツアーが始まりますが、10曲の新曲が加わることでセットリストもだいぶ変わってきますし、そういう風に見せ方を一新するっていうのが2024年の活動のテーマでもあったので。そのための準備を色々な面でしてきた期間でした。 今市:ずっと新しいクリエイターを欲していたんです。今年は良い出会いやタイミングが重なって、音楽はもちろん映像面でもYUANN(kidzfrmnowhere.)さんというディレクターを迎えられて、新鮮で満足がいくものが作れました。何か新しいことをやるっていうのは、自分たちのモチベーションにも繋がると思うので、ここまでいい流れを作れていると思います。 ー先行で配信されたアルバム1曲目の「BLAZE」は、まさに「一新」というイメージがピッタリの曲ですが、どのような狙いやアイデアがありましたか? 今市:ここまで攻めたテイストのヒップホップはやったことがなかったので、コンセプトやイメージを一新する意思表示にもなるなと。デモの時点では、自分たちが歌入れをしてどう仕上がるのかが未知数だったけど、リリック面も含めて様々なトライをしてベストを導き出しました。 ØMI:アルバムの中では、一番最初にレコーディングした曲でした。これまでの三代目であればチョイスしていなかったような楽曲かもしれないですが、今回は狼煙を上げるという意味で、メンバーの意見が一致しましたね。クレジットに載っていない部分でも、レコーディングや制作で新しいことを試しています。 ー今市さんがここまでゴリッとラップをするのは初? 今市:そうですね、今までやってきたのはメロディ感のあるラップだったので。でも、ソロで色々な挑戦をしていたから、こういうラップをすることに対しては抵抗もなく、むしろやってみたいという気持ちでした。その結果、ハマりましたね。 ー2曲目の「TOKYO BLACK HOLE」はA.G.Oさんのプロデュースで、リリックには三代目らしい哀愁が漂いつつ、サウンドは今っぽくて面白い楽曲です。 今市:今作に色んなジャンルやテイストの曲がある中で、「TOKYO BLACK HOLE」は割とイメージがしやすい曲で、すんなりレコ―ディングできました。楽曲の勢いや構成がまずカッコいいですし、リリックもとても好きです。夢を持って上京してきた人や、東京という場所で戦っている人の背中を押せるようなメッセージを伝えられるのが嬉しいですね。 ØMI:A.G.Oさんと一緒にやることに対して驚く人もいると思いますが、僕らとしてはシンプルに楽しく作れた曲でしたね。ライブでのイメージも、コレオグラフも自然に湧いてくるような曲だったので。ヒップホップのシーンやプロデューサーのことを知らない人でも、この曲は楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。ちょっと洒落を効かせて「TOKYO DRIFT」のフロウを引用してみたりとか、イージーリスニングもできるけど、細部の要素もちゃんと作り込んでいる楽曲です。 ーGeGさんがプロデュースした3曲目「Baby don’t cry」は失恋ソングですよね。 今市:GeGさんは、キャッチーで美しいメロディを作るクリエイターというイメージがあったのでどのような曲になるかすごく期待していましたし、最初に聴いた時に「これはシングル的な立ち位置の曲になるな」と思いました。個人的にも、ミッドバラードとしてすごく好きなテイストで。あと、今回のプロジェクトや三代目に対して熱意を持ってくれていて、かなり細かく20回くらいトラックのやり取りをしたんですよね。その熱意に感動しましたし、それと比例して良い作品になったなと思います。楽曲としては、「花火」「冬物語」「C.O.S.M.O.S. ~秋桜~」のような三代目らしい艶っぽいバラードなので、昔から応援してくれているファンの人たちにも懐かしいと思ってもらえるだろうし、新しいリスナーにも何かを届けられる楽曲なんじゃないかな。 ØMI:GeGさんは、レコーディングの時にもスタジオで「こう歌ってほしいです」っていう要求を我々にしっかり伝えてくれて。今までの僕たちとしても、今作では今までとボーカルのアプローチを変えたいと思っていたから、プロデューサーが描いているイメージになるべく高いレベルで応えるために、いつもと違う環境でキャッチボールができたのは良かったです。あと、レコーディングブースで凄い数のデモ曲を聴かせてくれて、「この曲、めちゃくちゃやりたいんですけど」「是非やりましょう!」なんて会話をフランクにしたりして。どの曲も一貫してメロディが素晴らしい上に、ジャンルも幅広かったんです。今の時代のヒットメーカーの引き出しの多さや才能をまざまざと感じる空間でもありました。 ー4曲目の「You got my mind」はGooDeeさんと3Houseさんがプロデュースしています。 今市:3Houseは楽曲や映像もお洒落ですし、今のR&Bをやっているアーティストだと感じていたので、今回一緒にやれるのがすごく嬉しかったです。GooDeeと共作してくれるということだったので、なおさら期待値が高かったですし、上がってきたデモも3Houseが歌ってくれていたので、モチベーションを上げながらレコーディングできました。三代目はこれまでにもR&Bテイストの曲を歌ってきたけど、やっぱりどこかポップス要素があったりもしたので、それとは違うR&Bは、新鮮に感じてもらえるんじゃないかなと思います。 ー以前、Rolling Stone Japanで3Houseさんにインタビューした際には、フロウをとにかく大切にしていると話していたのが印象的でした。 今市:そのあたりもデモを聴きながら自分なりに解釈して、タイム感や言葉の伝わりやすさを意識しつつ、自分のフィルターを通しながら歌いましたね。 ØMI:僕も3Houseの楽曲は前から聴いていて、特に「FEELINGS」が大好きだから、こういうテイストの曲をやってみたいなと思っていました。今回、実際にそれが実現したので、なるべく彼らのデモに忠実に歌うというか、再現度をどれだけ高められるかがこの曲の鍵だと思っていて。自分たちの色に染めるというよりは、彼らが作ってくれた世界観にどれだけ寄り添えるかを考えながら作業させてもらいました。