今市隆二とØMIが語る、三代目 J SOUL BROTHERS『ECHOES of DUALITY』全曲解説
プロデューサー陣の熱意から生まれる相乗効果
ー5曲目の「Lucky」はZot on the WAVEさんがプロデュース、Candeeさんがリリックを手がけました。収録曲の中で最もヒップホップ度数の高い曲ではないかなと。 今市:そうですね。ビート感も含めてすごく今のヒップホップなので、それに対して自分たちをどう合わせていくかを考えました。Zot on the WAVEやCandeeの曲を聴き返して、どういう歌い方がいいのかを試しながら、自分たちのキャラクターやブランドもあるから、良い塩梅を見つけてレコーディングしましたね。曲の中にプロデューサータグもあって、わかりやすく良いコラボレーションができたなと思います。リリックには僕らの代表曲である「R.Y.U.S.E.I.」を感じさせるフレーズもあるし、人生論じゃないですけれども、自分自身がどう生きていくべきかを説いてくれる深いメッセージがあるので、リリックを読みながら聴いてほしいです。 ØMI:ZotさんとCandeeと3人でスタジオにいたら、スタッフさんに「このメンツが揃ってることが不思議すぎてめっちゃ面白い」って言われました(笑)。それがまさに今回のアルバムの面白さでもあるなと思いつつ。Candeeは「R.Y.U.S.E.I.」がリリースされた頃に高校生で、「同級生がみんな好きだったから、よくカラオケでお世話になってました」なんて話をして。そんな彼が今はヒップホップのシーンの最前線にいて、リリックに「R.Y.U.S.E.I.」のフレーズを持ってきてくれるっていうのはすごくエモーショナルだなって。Candeeには「Unlucky」というヒット曲があるんですけど、「Lucky」にその世界観を引き継ぐというやり方もまさにヒップホップだなと思います。スタジオトークもめちゃくちゃ楽しかったですね。 ー続く6曲目の「LIT IT UP」ではKMさんとタッグを組みました。 今市:ソロ活動でお世話になっているChaki Zuluさんを始め、周囲と音楽の話をする中でKMさんの名前は数年前からよく出ていて。ただ、その時は三代目で一緒にやるっていう発想には至らなかった。なので「やっとできる」という気持ちはありました。最初にビートだけ聴かせてもらったんですけど、その時点でめちゃくちゃ低音が効いていて、さらにトップラインも付いたら「めっちゃカッコいい!」みたいな。世界観が強くて、雨が降ってる夜のようなシーンが思い浮かぶ楽曲だと思っていて。映像も駆使して、カッコいいパフォーマンスができそうだなと思いました。ラストのサビにジャジーなフレーズが入っていたり、和のテイストが加えられたりもしていて、色々なスパイスが面白いですよね。BLAZEが炎だとしたら、LIT IT UPはその対になる雨や水の要素がある。そういうところも感じてほしいです。 ーそういった楽曲同士の整合性やバランスは、アルバムを制作しながら考えていったんですか? 今市:今作は“PETAL & THORN”(花びらと棘)の二面性というテーマがあって、強い曲と柔らかい曲に分かれています。ツアーやアルバムを構想する最初の段階で、二面性のあるものをみんなで出し合って表を作ったりしたんです。その中で、炎に対する水、風に対する土のようなエレメントは使いやすかった。そのアイデアは今回のツアーにも反映されてるので、映像も含めて全部を楽しんでほしいですね。 ØMI:アルバムを作り始める時に、クラシックとヒップホップを組み合わせたアートに振り切る曲をやりたいと思って、ジェイ・Zとビヨンセの楽曲をリファレンスとして出したりしていたんです。そんな話をしている中でトラックが上がってきて、KMさんとご一緒させていただいたことで、楽曲の説得力にも繋がった。アルバムの中でも一際異色な存在感を放つ曲になってくれて、すごく良かったですね。 ー7曲目は、今市さんのソロ活動でもおなじみのChaki Zuluさんによる「CRAZY-CRAZY-CRAZY」です。 今市:僕も大好きな、イン・シンクをはじめとする2000年代のボーイズグループを感じさせる曲ですね。Chakiさんはもちろん、T.Kura(GIANT SWING)さんも制作に加わっていただいているんですけれど、彼らは最近数多くの曲を一緒に作っているので、最強の二人が揃ったなっていう感じで。やっぱりChakiさんは、どんなジャンルでも美味しいところを上手く出してくれるっていう印象があるんですよね。この曲も、めちゃくちゃ展開が多い中で、どのセクションにもハッとさせられる部分がある。音数を抑えた間奏のクールさとかも含めて、もうあっぱれというか。シングルになっても全然おかしくない曲で。Chakiさんが三代目と制作をするのは初めてだけど、僕とソロで関わりがあったこともあり、Chakiさんなりの熱意を持ってやっていただきました。リリックも、Chakiさんから見た三代目 J SOUL BROTHERSを表現してくれているので、パフォーマンスにもぜひ期待してほしいです。 ØMI:二人が思う「三代目にはこれをやってほしい」という揺るがない思いがあって心強かったですし、仕上がりのイメージが制作側から伝わってきたので、それにどれだけ応えられるかにフォーカスしてチャレンジできました。ライブを想定すると、この曲はシーンをガラッと変えてくれる存在になるだろうなと思いながら作っていたので、パフォーマンスがより映える曲になりましたね。 ー8曲目の「DEVELOP」は、三代目のセルフプロデュースで、Aile The Shotaさんとの共作ですね。 今市:「DEVELOP」は一番最後に制作した曲で、制作時にはドームツアーをどんどん組み上げていかなきゃいけない段階に入っていました。僕たちはやっぱりライブというものがメインで、一番大切にしている場所なんですけれど、今まで何度もツアーをやってきたアーティストとしての感覚では、もっとアッパーな曲が欲しいということになったんです。だから、今回のドームツアーのテーマソングとまではいかないですけれど、ポイントになる曲だなという風に思っています。 ØMI:ライブに向けた楽曲を作る中で、リリックはプロデューサーというよりもシーンの最前線にいるアーティストに書いてもらうのが良いんじゃないかと思って、Aile The Shotaくんに書いてもらいました。まず最初に一度リリックを書いてもらって、その後に今回のツアーのコンセプトやライブへの想いを伝えたら、さらに違う角度からの言葉を加えたものを上げてきてくれたので、彼のアーティストとしてのIQの高さを感じましたね。 ー9曲目「Make up」は、今市さんのソロに参加していたクリエイティブ・コレクティブのw.a.uとVivaOlaさんがプロデュースしています。 今市:はい。ソロからの流れがあったので、良い関係値の中で三代目でもコラボできました。トータルで3曲ぐらいデモを上げてくれて、結果的に「Make up」をチョイスさせてもらったんですけれど、w.a.uらしさとVivaOlaらしさがめちゃくちゃ出ていて好きですね。今、ドームツアーのボーカルリハもやってるんですけれど、「Make up」を歌ってると無条件でノッてくるというか。歌い手を盛り上げてくれる、“音楽”させてくれる曲だなと思います。それはw.a.uとVivaOlaのセンスですよね。スタジオで話をしていても、世代が一回り以上下だったりするので、音楽に対しての解釈も全然違うから、話していて面白いし刺激になります。ライブで歌うのが楽しみですね。 ØMI:僕はこの曲が一番難しかったですね。VivaOlaが歌っているデモがすごく良かった分、それをどう再現できるかが肝でしたし、今までの僕たちの楽曲を振り返っても、この手の歌い方はしてこなかったので、発声なども含めて、チャレンジングな一曲でした。 ーアルバムを締めくくる10曲目の「Best life」は、JIGGさんのプロデュースなのに良い意味で感動的な応援ソングになっているのが面白いなと思いました。 今市:JIGGさんのトラックに、僕のソロでも一緒にやらせてもらっているEIGOさんがトップラインを乗せていて、ヒップホップがベースにありつつ戦略的なメロディラインが乗ることで感動的な曲になりました。温かみのあるバラードに聴こえるけど、この曲はヒップホップ的アプローチのバラードなんですよね。そこも自分たちにとって新しい表現になっているかなと。リリックでは、夢に向かって進む中で何かを失う悲しさ、それに耐えて得られる強さについて歌ってるので、頑張ってる人への応援ソングになればいいなと思います。 ØMI:JIGGさんの曲は自分もいちリスナーとしてたくさん聴いていましたし、PSYCHIC FEVER「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」をJIGGさんがトラックメイクしていたりという繋がりもありました。リリックに関しては、僕らの活動の規模感からすると、どうしても抽象的な表現になってしまいがちなんですけれど、やっぱり今のリスナーには、ありのままの等身大の言葉が一番伝わるんじゃないかと思っていて。自分たちのキャリアや、応援してくださる幅広い世代の方のことを考えると、グループのイメージを踏まえた言い回しになりがちなんですけど、そういうことじゃないんだなと。そういったことを実感させてくれた曲でしたし、作ってくれたクリエイター陣の想いを、自分たちがちゃんとライブのステージで発信していかないといけないなと思わせてくれた曲でした。