始まりはパタゴニア創業者との出会い:フリースの元祖ポーラーテックの技術力とは
ー当時のフリースの開発秘話などは残っていますか。 これまでなかった素材を開発するため、いくつもの基準をクリアしていくのは大変だったようです。 「シンチラ」も幾度かの試作品を乗り越えてできたものでした。初期にはフェルトを化繊で作ったものを開発し、それを製品化したらすごく好評だったようです。 そこから開発がさらに進められて、両面起毛のフリースができました。チンチラ(ビロード)のような肌触りと美しい光沢感があり、そこにシンセティックの言葉をかけあわせて「シンチラ」という名称が誕生しました。
ポーラーテックの技術力とは
ーポーラーテックのフリースの特徴を教えてください。 軽量で暖かく、通気性に優れているという特徴があります。それを可能にするのが、創業以来のノウハウの蓄積です。 たとえば、軽さを出すには編地を工夫しなければなりません。ポーラーテックは丸編みの機械を使いながら、編地を適度にあまく編んでいます。それにより糸と糸の間に隙間ができるので、その分だけ生地が軽くなりますし、通気性が確保されるので、蒸れも感じにくくなります。 また暖かさの点では、起毛がポイントです。単に起毛をかけるのではなく、針の硬さや角度、回転するスピードなどを調整しています。そうすることで、毛足の長い嵩高のある起毛が実現でき、空気を滞留させることで保温効果を高めています。
ーポーラーテックは衣服を3つに分けて開発していると聞きました。 ポーラーテックの強みとして、「レイヤリングシステム」を自社で完結できることです。大枠3つのレイヤーを想定していて、それぞれに適した生地を開発しています。 第一に、ベースレイヤー。いわゆる肌着のように、直接肌に触れる衣服に使用される生地があります。こちらは吸水速乾性、通気性、抗菌防臭等の効果がある生地です。 その次に、インシュレーションという保温性を重視したカテゴリーがあって、フリースはここに該当すると考えてください。 最後にアウターに該当するウェザー・プロテクション。ここには透湿防水機能をもった素材が当てはまります。
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