取材記者の影響力もグローバル、選手移籍は大ニュース瞬時に100万人に発信【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑪】
2022年にプレミアリーグの外国向け放映権料がイギリス国内を初めて上回ったと報じられ、名実ともにグローバルなリーグとなった。2022~23年シーズンは世界189カ国の9億世帯に試合が放送され、18億7千万人がリーグを追っているという。世界中から桁違いの注目を集めるようになり、イングランドのサッカーを取り巻く新聞などの活字メディアも大きく様変わりした。(共同通信=田丸英生) 【写真】激高し、ふてくされることもたびたび…自己中なプレーでチームメートから叱責され、人前で何度も泣いた大学時代 学生寮で同部屋だった記者が見た素顔 W杯日本代表・相馬勇紀
▽活字メディアもグローバル化 インターネットの発達に加え、英語メディアは広く読まれる特性があるため強い影響力を持つ。スポーツ専門サイト「アスレチック」のリバプール担当を務めるジェームズ・ピアース記者(46)もその一人で、X(旧ツイッター)のフォロワー数は100万人を超える。ジャーナリストとしてのキャリアを始めた24年前にはソーシャルメディアはもちろん、インターネットも今ほど広く浸透していない時代だっただけに「取材の考え方、そして記事の書き方は大きく変わった」と実感を込める。 2000年にイングランド南西部バースの地元紙でスポーツ記者としての第一歩を踏み出し、2005年にリバプール・エコー紙に転職。そして幼少期から応援していたリバプールの専属番記者となった2011年に、メディアに普及しつつあったツイッターのアカウントを開設した。 「エコー紙はデジタル化をいち早く取り入れていたが、自分は紙に記事が印刷されることに喜びを感じていたから当初はあまり乗り気ではなかった。社内のデジタル担当に『記事を宣伝するのに使って欲しい』と依頼されて始めたのがきっかけだった」
当時エコー紙の発行部数は約12万部で「地方紙なので基本的には毎週スタジアムに足を運ぶようなファンに向けて記事を書いていた」。それがソーシャルメディアの台頭により、読者層がローカルからグローバルに急拡大した。世界的な人気を誇るビッグクラブの情報は需要が高く、ピアース記者に求められる仕事にも変化が表れていった。 選手の移籍や監督交代など大きなニュースを発信するとフォロワー数の増加で反響が目に見え、読者のコメントで反応をリアルタイムに知ることは取材のアイデアにもつながった。速報性が第一に求められるようになっても「最初に報じることより、正確に報じることの方が大事と教わってきた。そうやって時間をかけて信頼を積み上げるようにした」と新聞記者としての原点に忠実であり続けた。 ▽SNS全盛の弊害 インターネットの交流サイト(SNS)でメディアだけでなく、選手からファンまで誰もがやり取りできるようになると利便性とともに弊害も生まれた。根拠のないうわさ話はあっという間に広まり、新聞社もウェブサイトのアクセス数を稼ぐために目を引く見出しを付けることを重視。エコー紙でもソーシャルメディアで話題になっている単語に絡めて記事を出すスタイルを取るようになったという。