明らかな詐欺にも関わらず、”地面師”をわずか2時間で釈放…情報操作に乗せられた警察の「杜撰で荒唐無稽な」捜査
共謀の容疑をかけられる
もちろん津波はあきらめ切れない。釈放の電話を受けたあと、長野県にある松田の両親の住む実家まで突き止めた。5月の末、物件を担当した担当社員とともにそこを訪ねたという。 「松田の実家は安曇野のあたりで、かなり遠く、東京から6時間くらいかかりました。そこで『息子さんが騙し取ったカネをあなた方に返してくれとは言わないから、せめて警察で正直に話すように説得してもらえませんか』とお願いしたのです。しかし、向こう(松田の両親)は、このようなトラブルに慣れたもんでした。また来たか、って感じで、体よく追い返されました」 津波たちは肩を落とし、松田の実家をあとにした。こう言葉をつないだ。 「私たちが帰って間もなく、松田の弁護士を名乗る人物から、えらい剣幕で抗議の電話がありました。それで、その弁護士に『先生は当人が詐欺を働いていることを知っているんですか』と尋ねると、『それなら訴えればいいだろ』と開き直る始末でした」 このとき松田の依頼した弁護士がどう動いたのかについては定かではないが、ひょっとすると、北田が手配したのかもしれない。地面師事件には、常に弁護士の影がちらつく。 一方、松田の身柄を押さえられる状況だった町田警察署の捜査は、そこから迷走を極める。その原因は捜査陣のやる気のなさもあるだろうが、それよりむしろ、まったく見当違いな筋立てをしたせいだといえる。あろうことか、町田署では被害者の津波を共犯に見立ててしまうのである。 津波は世田谷の元NTT寮の購入のため、取引先のY銀行からその分の融資を受けた。それについて町田署では、津波が地面師たちと共謀し、銀行から融資を騙し取ろうとしたのではないか、と疑ったというのである。 「私は融資に関して個人の連帯保証をしているんですよ。つまり会社が返済できなければ代わって私個人が銀行に払わなければならないのに、なぜそんなことをする必要性があるのか。あまりに間違いがひどいのです」