悲観の中から生まれる「日本株再起動シナリオ」 日経平均4万円という“意外と薄い壁”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
------------------------------------- 【目次】 1.日本株が伸び悩むワケ 2.反転に向かう日本株の予想EPS 3.4万円突破で再起動する日本株の上昇相場 ------------------------------------- 7月11日に高値をつけた日本株は、夏場の大幅な調整後はもみあいの展開が続いています。日本株をとりまく環境は、(1)総選挙での与党惨敗、(2)トランプ新大統領の誕生、(3)基幹産業である自動車業界で続いた減益決算など、悪材料に事欠かない状況にあります。「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」と言ったのは米著名投資家のジョン・テンプルトンですが、こうした悪材料にもめげず、下値を切り上げた日経平均株価は再び4万円に接近しつつあります。果たして、日経平均は節目とされる4万円をクリアして、上昇相場を再起動することができるのでしょうか。
1.日本株が伸び悩むワケ
■初夏まで順調に推移していた日本株は、米景気の失速懸念などを材料にいったん大幅に調整し、その後は7月の高値を回復することなくもみあいが続いています。こうした「日本株の足踏み状態」の背景には、日本企業の予想利益の伸び悩みがありそうです。 ■この数年あまりの日本株の動向を振り返ると、概ね業績見通しの変化に沿って動いてきていることが確認できます。2022年度の日本株は1年間を通して頭の重い展開に終始しましたが、この年度の12ヵ月先予想一株当たり利益(EPS)の伸びは年央には頭打ちとなり、年末にかけてじり貧状態となりました。 〈予想EPSの伸び悩みで足踏みする日本株〉 ■一方、株価が大きく上昇した2023年度を見ると、12ヵ月先予想EPSは年度末にかけて加速しつつ、上昇が続いています。そして2024年度の予想EPSは、春先は昨年度と比べても好調な推移を見せていましたが、株価が伸び悩んだ夏場以降は急ブレーキがかかっていることが確認できます(図表1)。 ■2022年度と同様に、今年度も予想EPSが伸び悩む状況が続くようであれば、日本株はこのまま冴えない展開に終始してもおかしくないでしょう。しかし、そうした懸念は杞憂に終わる可能性が高いのではないでしょうか。というのも、予想EPSの状況を子細に見ていくと、その内実は「伸び悩み」の一言で片付けられるほど単純ではなく、むしろ、日本株全体としは底打ちの兆しがみられるからです。
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