悲観の中から生まれる「日本株再起動シナリオ」 日経平均4万円という“意外と薄い壁”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
2.反転に向かう日本株の予想EPS
■ここもとの日本株の予想EPSの伸び悩みは主に製造業によるものですが、なかでも、製造業全体の足を引っ張っているのが日本の基幹産業である自動車業界の業績です。自動車業界の今期の中間決算を見ると、大手完成車メーカーを中心に減益となる会社がほとんどで、大幅な業績悪化から大規模なリストラの発表に追い込まれる企業まで現れています。しかし、足元の業種別の12ヵ月先予想EPSの動きを見ると、底打ちの兆しを確認することができます(図表2)。 〈底打ちする自動車の業績〉 ■業界最大手のトヨタ自動車の7-9月期の業績は、営業利益が前年同期比19.6%減の1兆1,557億円となり、一部の経済誌をにぎわせる結果となりました。しかし、表面的な減益決算とは裏腹に、その内実は、一時的な生産停止や子会社の認証問題に関連した3,000億円超の一時費用を除くと、市場予想を上回るおおむねポジティブな決算でした。また、通期の会社予想が据え置かれるなど、生産回復や高収益のハイブリッド車の販売好調による年後半の業績回復を期待させる内容と言えそうです。 ■こうしてみると、一部の完成車メーカーは引き続き厳しい状況が続きそうですが、広く部品メーカーを含む日本の自動車業界全体を見ると、年度末に向けて業績の回復傾向を確認する可能性が高まっています。 〈上振れる銀行決算〉 ■これまで製造業の不振を補ってきた内需の非製造業の業績は、今後も好調が期待できそうです。なかでも目を引くのが、銀行を中心とした金融業界の好決算です。弊社では、今後も日銀は緩やかな政策金利の引き上げを続けていくものと見込んでいますが、貸出金利の上昇による利ザヤ改善などを追い風に、金融業界の業績改善が今後も続くものと期待できそうです(図表3)。 ■仮に、自動車を中心とした製造業の業績底打ちが鮮明となり、銀行など金融業界を中心に内需の業績改善が続くようなら、日本企業全体の予想EPSは、再び上昇軌道に回帰する可能性が高まりそうです。
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