質実剛健な1990年代セダン3選
セダンがまだ輝いていた時代が懐かしい! 【写真を見る】懐かしの1990年代セダン(61枚) 当時の貴重なカタログも
地味だけどイイ
今となっては信じられないが、1980~1990年代は、セダンの花盛りだった。 もちろん、セダンにはSUVに対して乗り心地がいい、ステーションワゴンに対して静かなど、いいところが色々あるので、本来は乗用車の王道だ。 1990年代には、日本の自動車メーカー各社が、開発者の信念のようなものをしっかり持ち、いいセダンづくりを追求していた。ただし、バブル崩壊に伴う経営状況悪化から、一部モデルはコストダウンを強いられた。 それでも好景気に開発された全輪駆動システムとかエアサスとか後輪操舵機構とかそれなりに“飛び道具”を使いつつ、核は、乗り心地と広さ。そして、乗ればしっくりくる……今も特にドイツメーカーが追求している、クオリティの高さが目指されていたのだった。 それゆえ、今のセダンとは異なる趣があったのが懐かしい。
(1) トヨタ「カムリ」(5代目)/「ビスタ」(4代目)
1990年代のトヨタのラインナップには、セダンが多かった。サイズやエンジンなど微妙に違えて、トヨタが得意とする“縦並びピラミッド”を構成していたが、それだけでなく、走りのセダン、広いセダンなど、セダンの長所をひとつずつ拡張したようなモデルづくりも印象的だった。 パッケージングのいいセダンというと、1994年発売の「カムリ」と「ビスタ」だ。私はこのときのシリーズ、気に入っていた。ビスタとしては4代目、カムリとしては1980年の「セリカ・カムリ」を勘定に入れると5代目となる。通ウケのするセダンで、地味といえば地味。でもクオリティは高かった。 4650mmの全長に対して、2650mmのホイールベース。このホイールベース長は、「コロナ」シリーズ(2580mm)と「マークⅡ」、「チェイサー」、「クレスタ」の3姉妹(2730mm)の中間。前輪駆動の利点を追求して、室内スペースは余裕があった。それに合成樹脂のパーツなどクオリティは高かった。 ボディは雨どいをもたないプレスドアを採用。キャビンまわりの造型は2代目セルシオを連想させた。先代にあったV6エンジンやスポーティツインカムがなくなったのも特徴といえば特徴。 エンジンは、2本のカムシャフトをチェーンとかベルトでなくギアで噛み合わせる効率的な「ハイメカツインカム」とディーゼルターボ。名より実をとるというか、定見である。車重は80kgも低減。このシリーズを開発したエンジニアは「わかっている」と、思ったものだ。 でも、地味なせいか、売れ行きはいまひとつパッとしなかった。カムリはこれが最後となってしまった。いまでもこういうセダン、乗りたい人いると思う。