質実剛健な1990年代セダン3選
(2)日産「セフィーロ」(2代目)
スタイリングはわりと地味、でも、内容はけっこう凝っていた。1994年に日産が発売した2代目のセフィーロは、アッパーミドルクラスのセダンのマーケットを活気づけてくれたクルマである。 1988年登場の先代が、後輪駆動に直列6気筒エンジン(RB型なのでちょっと古かったけれど)、それに、後輪操舵システムやアクティブダンパーや電子制御ステアリングなど、バブル期らしく、凝りに凝ったモデルという印象が強かった。 モデルチェンジした2代目は、先代の市場を引き継ぐのでなく、前輪駆動方式で、パッケージング重視のセダンという、まっとうなありかたを追求したモデルになった。北米向けに開発されていた2代目「マキシマ」の日本国内向け仕様と、初代とはがらりと変わったのだ。 エンジンも当時日産が力を入れていたVQ型というV型6気筒を搭載。スペース効率にも優れる扱いやすいパワートレインだ。ホイールベースは2700mmとかなり余裕があり、室内は広かったのが印象的だ。 走りことバランスがとれていたものの、突出した特徴に欠けていたのが残念。1997年に追加されたワゴンはスタイリッシュで、2代目セフィーロといえば、個人的にはこちらのイメージが強い。 でも、いまだったら2.5リッターのVQ25エンジン搭載モデルなんて乗ってみたい。初代ほどのインパクトはないかもしれないけれど、まっとうに作られたセダンを、ここでもう一回評価するのは、けっして悪いことではないだろう。
(3)マツダ「カペラ」(7代目)
1997年に7代目となって発売されたマツダ・カペラも、2代目セフィーロとちょっと似て、ステーションワゴンが話題になったモデルだ。でもセダンは骨太なスタイリングで、いまの目にもカッコよく映る。 1980年代後半からのマツダは、ユーノスやアンフィニやオートザムといった販売チャネル拡大にあわせて、冒険的なコンセプトのセダンを送り出していた。しかしバブル経済が崩壊して、販売チャネル縮小の決定がくだされ、カペラが復活したのが1994年のことだった。 1994年登場の6代目は、多極化した販売チャネルを手じまいするとともに、1991年から1994年までマツダ「クロノス」と化していたカペラを元の路線に引き戻したモデル。エンジニアがしっかり作りこんだのは、7代目なのだ。 4575mmの全長に対してホイールベースは2610mmを確保。外寸はいわゆる5ナンバーサイズを守りながら、前輪駆動方式によるパッケージングを活かし、室内空間は出来るだけ広くとっていた。しかも乗員のポジションは、まるでイスに座るように上体をできるだけ立てたもの。私はこのまっとうな設計思想が好きだった。 それまではラウンジチェアのようなシートとか、合成樹脂の可能性を追求したようなオーガニックシェイプのダッシュボードとか、実験的ともいえる造型に挑戦していたマツダのデザイン部が、いってみればトヨタ車と真っ向から勝負するような、まじめなデザインを追求したのは、とても嬉しかったのをおぼえている。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)