油性ペン「マッキー」がキャラ化 岡崎体育のMVで、ゼブラ本気の挑戦
世代を超えておなじみの油性マーカー「ハイマッキー」がキャラクターになった。2024年6月にゼブラが発表。単なるプロモーションのためではなく、ライツビジネスに本格参入するための一手だという。認知度の高い商品のキャラクター化には、どんな狙いがあったのか。ゼブラに聞いた。 【関連画像】油性マーカー「ハイマッキー」のキャラクター「Hi! Mckee」をお披露目する発表会には、テーマソングを担当した岡崎体育も登場。「Hi! Mckee」と一緒にライブパフォーマンスも行った(筆者撮影) 筆記具メーカーとして、ボールペンの「ブレン」「サラサクリップ」や、油性マーカー「ハイマッキー」などの商品を持つゼブラが、2024年6月20日、ハイマッキーをモチーフにしたキャラクター「Hi! Mckee」を発表した。 面白いのは、このキャラクターが、ハイマッキーのプロモーションの一環としてではなく、本格的にライツビジネスに参入するためのものだということだ。 ゼブラはペン先の製造販売に始まり、125年以上続く歴史の中で、様々なヒット商品を生み出してきた。今回、キャラクター化したハイマッキーも、いまさらプロモーションの必要がないほど知名度があり、愛用者も多いロングセラー製品だ。 筆記具メーカーが、なぜライツビジネスに挑むのか。 「現在のビジネスモデルはゼブラの軸であるため、今後も変わらない。ただ、さらなる成長を考えると、今と同じ、あるいは既存商品の延長上にいるだけでは限界があった」と、ゼブラ取締役執行役員の畦地教子氏は語る。 畦地氏は、企画の発案者であり、実際の企画も担当している。つまり、キャラクターは同社の新規事業ということだ。 新規事業に参入するといっても、ただ目新しいことをすればよいというわけではない。ゼブラが持つブランド資産を活用し、かつ「書く楽しさを伝える」というパーパス(存在意義)からブレないことが重要だと考えた。 数あるゼブラの商品の中から、ハイマッキーの独特なフォルムに目鼻をつけたら、かわいいキャラクターになるのではないか? 畦地氏はそう直感したという。 ハイマッキーは2026年に、発売50周年を迎える。しかし、「こうした長い間、実用品として粛々と売れ続ける商品は、大きなマーケティングやプロモーション、店頭での施策をやりづらい」と畦地氏。前職でライツビジネスの経験があり、商品の認知度が高過ぎると、販促効果が限定的になることを知っていたためだ。 そこで、「ハイマッキーの場合は、プロモーションより、ゼブラとして新しいビジネスになるキャラクター化の方が面白いのではないかと考えた」と畦地氏は明かす。新しいビジネスプランを作成し、社長をはじめ、社内で提案して了承を得たうえで、新たな挑戦をスタートさせた。 ●ハイマッキーはどんな人が使うのか? ライツビジネスに参入するからには、キャラクターの方向性や世界観、他のキャラクターとのポジショニングを分けるなど、細かく設定する必要がある。そうしなければ、キャラクターが立たないのだ。 そこでゼブラは、ハイマッキーをどういう人がどんなシチュエーションで使っているのか、ハイマッキーにどんなイメージを持っているかなどを洗い出すため、マーケティングやデザイナー、PRのチームからメンバーを集め、プロジェクトチームを立ち上げた。 キャラクターの開発やプロモーションプランは、音楽のマーケティングやライブ、イベント運営を手掛けるソニー・ミュージックソリューションズ(東京・港)に依頼した。ゼブラの社員だけで決めるとハイマッキーの固定観念にしばられてしまう可能性もあるため、外部に頼ったのだ。 プロジェクトチームと何度もブレストを重ねていき、最初に出てきたイメージが「『真面目』『頼れる』『安心する』といった、割と硬いキーワードだった」(畦地氏)。 さらに、ハイマッキーがアートの世界やクリエーティブの領域でも愛用される側面もあることから、「大胆」「心の中のクリエーティビティーの解放」といったキーワードも重要視した。 「ハイマッキーって、模造紙に書くときに“キュキュ”って音がするよね、キャップを開ける時に“ポン”って音がするよね、という話から『音』というキーワードが生まれた。キャップを開けたとき、本体とキャップの形が『びっくりマーク』に見えるといったイメージからも設定を固めていった」(畦地氏)