海外でも「貯蓄+公的年金」では豊かな老後は難しい 世界標準の老後の資産の増やし方とは
極端な例ですが、公的年金の構造や仕組みが日本を含む多くの先進国とは全く違うシンガポールでは、賦課方式(世代間扶養)ではなく、積立方式(給与天引による自己積立)が取られています。 積立方式では、個人の拠出額全額が、自分の口座に積み立てられ、定年時に積立額全額プラス利子の受給が確保されているという特色があります。年金見込み額は積立額によって大きく異なり、現役時代の収入に大きく左右されます。 例えば、2024年に55歳になる方の65歳からの年金支給額は、積立額が20万シンガポールドルの場合、月額約1630シンガポールドルの受け取りです(2024年1月22日現在 標準プランの場合)。シンガポールの物価水準を考えると、年金だけで生活をするには相当慎ましい生活が求められます。しかし、アジアや欧米の多くの方は老後も収入を維持したり、それまでに資産運用をしたお金を活用させています。
日本では、厚生労働省が発表した「遺族厚生年金」の改正案に対して、SNS上で炎上するということも起こりました。共働き世帯が多数になるにつれ、国民年金の第3号被保険者制度の廃止を求める声も強まっています。 ■働く意欲が湧く年金制度を 積立方式のシンガポールではそもそも働かないと自分の積立額は増えないので、将来受給できるお金もありません。とてもシンプルで公平なので、女性も高齢者も働こうというインセンティブが働くのです。言うまでもなく、企業から長く雇用されればされるほど、退職後の生活は安定します。
シンガポールでは、定年年齢を2026年7月より64歳、再雇用は69歳までに引き上げられる予定です。企業は、必要に応じて条件を調整した上で、その年齢まで適格な従業員の再雇用を提供するか、その代わりに雇用支援を提供しなければなりません。しかし、国も助成金などでサポートをします。 現役時代はシンガポールで頑張り、老後は近隣のアジアに移り住みたいと計画を立てている方も多いのです。 彼らの資産運用は非常に積極的で、日本人の資産形成に対する考え方とは対極にあるかもしれません。ただ、日本も今後は自助努力で資産形成をしていく重要性がどんどん高まっていくと考えられます。
シンガポールは資源のない国なので、自分たちが努力することをやめることがいかに危険かを理解しています。日本でもこうした自助努力ができる方が溢れていけば、国も少ない予算で効率的に運営していけるようになるかもしれません。 人生100年時代の自分自身のライフプランもより能動的で、明るく前向きに変化するのではないでしょうか。そのための武器として、日本の多くの方にも本書で投資力を身につけていただきたいと思います。
花輪 陽子 :ファイナンシャルプランナー