阪神・藤川監督 新たな座右の銘「球進一歩」 岡田前監督「球道一筋」から一部継承、常勝軍団へ「過渡期迎えさせない」
阪神の藤川球児監督(44)が取材に応じ、新たな座右の銘を「球進一歩」とすることを明かした。岡田彰布前監督(67)の「球道一筋」から一部を引き継ぎ、前監督の後継者として一歩ずつ進んで行くという覚悟を込めた。球団創設90周年の節目に覇権奪回を託された新指揮官は、代名詞“火の玉”のように熱い思いを語り尽くした。 藤川阪神が船出の年を迎えた。昨年10月に阪神の第36代監督に就任。昨秋の安芸キャンプでは「没頭」をテーマに掲げ、新たなチーム作りに着手した。「今はまだ港にいる状況。シーズンが始まれば、みんな出航します」と旅立ちの時を待つ。 航海の指針となるのは「球進一歩」の四文字。師と仰ぐ岡田前監督の座右の銘「球道一筋」に着想を得た、藤川監督の造語だ。「一筋の道を一歩ずつ進むという意味」と説明し、前監督の意思を受け継ぐという心構えを込めた。球児という名前の「球」の字も入った。 「球道一筋」は村山実の座右の銘でもあった。藤川監督は27年前「村山さんのような投手になりたい」とタテジマに袖を通した。「球進一歩」という言葉を通じて3人がつながり「流れの一つなのかな」と絶えることない虎の血脈を実感した。 岡田前監督の後を継ぐ重圧については「全くない」と否定した。「チームを預からせてもらうことに対する感謝の方が大きい」と語り、「やるべきことは強いチームを継続させる、過渡期を迎えさせないようにすること」と常勝軍団を形成すべく、使命感に燃える。 昨秋のキャンプではグラウンドで選手と積極的に対話を重ね、寄り添う姿には球児流の一端が垣間見えたが、シーズンが始まれば「選手を守る意味で厳しくすることも非常に大事」という。結果が伴わない選手を監督がかばうことで「逆に選手が(批判に)さらされ、しんどくなってしまう」とマネジメントに対する考え方を明かした。 自身が批判の矢面に立つ覚悟も当然ある。ファンの厳しい視線にさらされるのは虎将の宿命だが「どうせ一過性のもの。応援されることも責任を負わされることもある。僕が(批判の)前に出る瞬間はいつでもある。それを楽しんでいただければ」と余裕を漂わせた。 国内FA権を取得した大山ら4人全員が残留し、3人の新外国人も加えるなど陣容は整った。打線の核は「大山ですね」と明言。「(阪神が)勝ち続ける集団として、日本球界のリーダーシップを取っていく中で一番大事な存在。いいところで打ってくれるでしょう」と絶大な信頼を寄せ、「彼が一番輝くところで」と中軸での起用を示唆した。 阪神では過去に監督経験のない指揮官が就任1年目に優勝した例はない。球団創設90周年の年に「球団初」の快挙に挑むが、自身の足跡には「どうでもいい」と関心はない。「自分がどうこうというのは何もない」。私心を捨て、全てを猛虎にささげる。 ◆藤川 球児(ふじかわ・きゅうじ)1980年7月21日生まれ、44歳。高知県出身。現役時代は右投げ左打ちの投手。高知商から98年度ドラフト1位で阪神入団。13年にFAでカブス移籍後、レンジャーズ、四国ILp・高知を経て16年に阪神でNPB復帰。20年現役引退。21年に阪神でスペシャルアシスタント(SA)就任。24年オフに阪神監督就任。最優秀中継ぎ2回(05、06年)、最多セーブ2回(07、11年)。NPB通算782試合で60勝38敗243セーブ、163ホールド、防御率2.08。日米通算では811試合で245セーブ、164ホールド。06・09年WBC、08年北京五輪日本代表。