勤続35年以上の大卒サラリーマンなら〈平均1,822万円〉が手元に入るが…退職金の「一時金での受け取り」を安易に選択してはいけない“恐ろしいワケ”【FPが解説】
退職金は「余裕資金」ではない
いずれにしろ、退職金はまとまった金額になります。これほどのお金をいっぺんに得る機会は、人生の中でもそうそうないと思います。 人は大金を手にすると、舞い上がってしまう生き物です。頬が緩み、気持ちが緩み、財布のヒモも緩む。景気よく使い、退職金は羽が生えたように消えていきます。 こんなふうに残念な使い方をする人の、なんと多いことか。 たしかにいろいろなことができますが、勘違いしないでください。退職金は「余裕資金」ではなく、老後生活のための大切なお金です。 定年後は大きな勤労所得はあまり望めません。再雇用では、現役時代より収入が下がることが多いでしょうし、この先働ける年数も限られています。一度資産が減ってしまうと、なかなか取り返すことが難しいのです。退職金は賢く使わなければいけません。 だからといって、運用に走るのは考えもの。もちろん、現役時代から経験していた人が、運用で増やしていくのはいいことだと思います。 しかし、ほとんど経験のない初心者が、いきなり大金をつぎ込むのはオススメできません。多くの場合、運用に失敗し、元本を減らす結果になります。 突然始めて儲けられるほど、投資は甘くありません。筆者自身、成功と失敗を何度も繰り返して経験を積んできました。そうして、ようやく運用というものがわかってきます。 週刊誌やマネー雑誌、ウェブなどでは、「退職金は運用して増やせ」とか「老後資金は運用しないとダメ!」といった記事を見かけます。ですが、それを鵜呑みにしてはダメ! 大事な老後資金を増やすどころか減らしてしまったら、元も子もありません。
「相談」は、失敗につながりやすい方法
「初心者が自力で運用を始めるのは難しい。でも、詳しい人に相談すれば安全じゃないか? きっと、いいアドバイスをもらえるはずだ」 こう考える人もいるでしょう。ところが、さにあらず。相談は失敗につながりやすい方法です。というのも、相談する相手を間違えている人がほとんどだからです。 運用の経験がない人が相談に行く場所は、銀行の窓口など金融機関が多いと思います。これが失敗の元。銀行の窓口は「運用のプロ」ではありません。強いて言うなら、金融商品の「販売のプロ」です。 また、退職金のようにまとまったお金が銀行の口座に振り込まれると、銀行のほうから「運用のご相談にいっらしゃいませんか」と営業の電話がきます。誘いに乗ってのこのこ出かけると、個室に通され、支店長が挨拶にきたり。そのもてなしぶりに有頂天になりがち。そこで、言われるまま契約してはいけません。 銀行の窓口で勧められる商品に手を出すと、痛い目を見る羽目になります。どんなワナが待ち受けているかを解説していきましょう。 退職金特別プランに要注意 「退職金特別プラン」という商品があります。これは、円の定期預金と投資信託などを50%の割合で組み合せた商品です。 定期預金の利率は、なんと7%くらいになっています。たいへんお得に見えるものの、注意書きをよく読んでください。定期預金の金利は「3ヵ月」と、小さく書いてあります。つまり、7%の利率は3ヵ月のみで、あとは通常の金利になります。 一方、投資信託の販売手数料は、2~3%の商品が中心です。信託報酬も、大半は1~2.5%です。これが何を意味するのか。 たとえば、総額1,000万円を、定期預金と投資信託それぞれ500万円で利用したとします。 定期預金 3ヵ月の7%の利息は8万7,500円 投資信託 販売手数料は15万円 利息は8万7,500円のプラスになりますが、投資信託の手数料が15万円かかっています。つまり、スタート時点から6万2,500円のマイナスが出ているわけです。 その後運用しても、定期預金はほとんど利息がつきません。投資信託の信託報酬が2%なら、2%以上の運用をしないとプラスにはならないのです。 このようなプランを続けても、老後資金の運用は失敗する可能性が高いと言えます。
【関連記事】
- 再雇用で年収750万円→400万円見込の59歳・定年直前サラリーマン。「やってられるか」と恨み節も…65歳までもらえる!?「特別な給付金」に歓喜【CFPが解説】
- ハワイのはずが近場の温泉旅館に…月収「52万円」退職金「1,900万円」勤続「38年」のサラリーマン、妻に懺悔したワケ
- 〈年金繰下げ受給〉を選んで大後悔!年金月24万円を受け取る72歳・元サラリーマン「ちゃんと調べておけば」…年金受給の“ベストタイミング”は【CFPが解説】
- ありがとう。助かった…退職金額が「300万円以上」も変わる!?年収800万円の定年直前59歳サラリーマンが〈A4用紙1枚の申請書〉に感謝したワケ【FPが解説】
- オーロラ見学ツアーに自宅リフォーム…定年後〈退職金1,000万円〉を使い果たした60代・元一部上場企業サラリーマンが“老後破綻回避”のために画策した年金〈繰下げ受給〉の裏ワザとは【FPが解説】