寝たきりの18歳長女の卒業後の居場所がない 「18歳の壁」問題を深刻化する複合的な理由
「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。 * * * 先日、厚生労働省会見室で「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」主催の記者会見があり、会長の方にお声かけいただき私も出席させていただきました。テーマは「18歳の壁」です。親の会が行った「子の卒後の居場所問題」のアンケートの報告会でした。 ■「生活介護」の利用者が増加 働くのが難しい重度の障害のある子どもが、高校や特別支援学校を卒業後に通う居場所としては、「生活介護」などがあります。生活介護は、18歳以上の常時介護が必要な方を対象とした障害者支援施設ですが、利用する人は年々増加しており、施設の受け入れ先が見つからないという悩みをよく聞きます。また、通う施設が見つかっても、通所時間が午前9時前後から午後3時前後までで、障害の重い人が過ごす居場所は限られています。 親の会が2024年10月に実施したアンケート(有効回答数310件)では、見守りや介助が「常時」必要なお子さんが55%、「部分的に」必要なお子さんを合わせると93%を占めていて、それでも半数近くがフルタイム勤務でした。18歳までは放課後等デイサービスや移動支援などさまざまな制度を利用できて、障害児を育てながら働くことができるケースが増えてきたけれども、重い障害のある子どもたちは卒業後に通う居場所が限られ、多くの働く親(主に母親)は卒業とともに離職せざるを得なくなり、不安を抱いていることがわかりました。会見で隣に座った親の会の工藤さほ会長は、「18歳の壁と言われますが、壁ではなく“崖”だというのが私たちの実感です。子の卒業を素直に喜べず、経済的な不安から、夜も眠れない親たちがいます」と語っていました。